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火星の人面岩の謎

 しかし、なにごとにつけ、調べもせずに全否定するのは、これはこれで科学的な態度とはいえません。あることを証明することに比べ、ないことを証明するのは非常に難しいのです。

 たとえば、火星の人面岩として長らくUFOファンの心を捉えてきた画像があります。

人面岩?(NASA)

 これは1976年に火星探査機バイキング1号が撮ったもので、一見するとスフィンクスの顔のように見えるのです。写真はアメリカ天文学会でも発表されたのですが、見る限り大変整っていて、人工物と思われてもおかしくない形です。

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「これは宇宙人実在の証拠か!」と話題になり、一時期はUFO関係の雑誌や書籍には必ず掲載される定番写真となっていました。

 当然、天文学者も興味を持ち、アメリカや旧ソ連が何回か探査機を送り込んだのですが、なぜかことごとく失敗に終わりました。あまりにうまくいかないので「これを作った宇宙人に撃ち落とされているのではないか?」などという噂が立つほどでした。

 ところが、2001年になって、マーズ・グローバル・サーベイヤーが写真撮影に成功したところ、ただ単に真ん中が盛り上がった地形であることがわかりました。影の関係で、たまたま人の顔に見えていただけで、残念ながら火星の人工物ではないらしいとわかりました。もっとも、UFO信奉者には「宇宙人が証拠隠滅のために壊したのだ」と主張する人もいるようです。

アメリカ国防総省がUFOの情報を公表

 2023年5月、アメリカから驚くべきニュースがやってきました。アメリカ国防総省がUFO(未確認飛行物体)の情報を公表したというのです。アメリカ軍は何年も前から謎の飛行物体、すなわちUFOの映像を撮影しており、その映像のいくつかはすでに世の中に流れ出ていたのですが、ついにそれらを正式に認めたのです。調査した結果は、これらの正体は不明という結論でした。

 私が物心ついたころから、UFOと宇宙人の話はマンガやSF小説の中心テーマでした。子どものころは、宇宙人は実際にUFOに乗って地球に来ていると思っていたほどです。

 1977年に大学院に進学して天文学会に入り、当時の天文学会の最長老だった古在由秀(こざいよしひで)先生に初めてお会いしたとき、「先生、宇宙人の証拠を隠していませんか」と聞いてみました。先生は大笑いして「僕がその証拠を見つけたらすぐにメディアに公表するよ」といわれました。ちょっとがっかりしたのを覚えています。