ほんの少しの行き違いが変えた運命
当時聴き覚えた『オール・マイ・ラヴィング』『フロム・ミー・トゥ・ユー』『プリーズ・プリーズ・ミー』といったヒット曲の演奏シーンをふんだんに味わえるのも魅力だ。おそろいのマッシュルームカット。がに股で歌うジョン。「ライヴに行っても演奏が聞こえない」と伝説になった女子たちの歓声。そしてビートルズと言えば圧倒的なハーモニーの美しさ。「声域に恵まれてとてもいいハーモニーを奏でた」とピートも認める。最後にしみじみ振り返る。
「いつも満員だった。他のバンドがやらない境界線を越えるようなことをやっていたから。とても刺激的だったよ。その一端を担えて素晴らしかった」
バックに流れる曲は『シー・ラヴズ・ユー』=彼女はお前が好きなんだ、うれしいだろ。裏には「俺じゃなくってさ」という悔しさを感じる。意図した選曲だよね。バンドは俺(ピート)じゃなくあいつ(リンゴ)を選んだ。ほんの少しの行き違いが、世界的大スターになるかどうかの運命を分けた。人生は計り知れない。ビートルズや音楽ファンはもちろん、どなたにもオススメできる一作だ。
『ザ・ビートルズの軌跡 リヴァプールから世界へ』
伝説のロックバンド「ザ・ビートルズ」。数多くの名曲を生み出し熱狂的なファンを生んだ彼らも、メジャーデビュー前はリヴァプールで演奏する小さなコピーバンドだった。元ドラマー、ピート・ベストらメジャーデビュー前を知る関係者のインタビューと、当時のTVパフォーマンス映像を交えながら、知る人ぞ知る初期ビートルズの在りし日を紹介する。
監督:ボブ・カラザーズ/出演:アラン・ウィリアムズ、ピート・ベスト、アンディ・ホワイト/2008年/イギリス/74分/配給:NEGA/©SHORELINE ENTERTAINMENT/公開中