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 ちなみに、例のロータリーは1936年に整備されている。東京には同様のロータリーがあったが、東北・北海道でははじめてのロータリー。もともとは牛朱別川が流れていた場所だったところを、河川の付け替えにともなってロータリーが設置された。以後、戦後に至っても旭川の町のひとつのシンボルであり続けている。

 つまり、旭川は石狩川や忠別川、美瑛川といった川が集まる要衝に生まれた“軍都”で、人工的な計画都市。それを引き継いで、いまも北海道第2の都市として存在感を示している、というわけだ。

 

「雪に埋もれる町」のもうひとつの顔

 これまで、旭川には何度か訪れたことがある。そのほとんどが、雪に埋もれた真冬の旭川。

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 駅前のイオンモールから横断歩道を小走りで渡って買物公園に向かう、旭川の人たちを見てあっけにとられた。何度もクルマが行き交ってツルツルピカピカ、アイスバーンというよりはスケートリンクのような道路でも小走りで駆けられるとは。雪が珍しい東京暮らしにはそんなマネはできないから、教わったとおりのよちよち歩きで横断歩道を渡ったものだ。

 

 そんな冬の旭川とは違い、初夏の旭川は美しい。川の流れとその周囲に茂る緑の木々。遠くに見える大雪山系や石狩山地。高い建物がほとんどないから、青空が広く見えるのも実に北海道らしいところだ。買物公園の駅前の一角ではタワーマンションが建設中だったが、少なくとも広い青空だけはいつまでも残っていてほしいものだと思う。

 三浦綾子の小説『氷点』は、旭川が舞台だ。3歳で命を落としたルリ子にかわって、辻口家は養女を迎え、陽子と名付ける。陽子はルリ子殺害の犯人の子——。「原罪」をテーマに、旭川の町の美しさも描かれる。市街地としては大きく姿を変えた旭川だが、それでも往年の美しさは変わっていない。初夏の旭川には、ポプラの綿毛が舞っている。

写真=鼠入昌史

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