北海道では2番目、約32万人の人口を有する旭川は、盆地の中にある町だ。そして、いくつもの川が合流する水辺に恵まれた都市でもある。
ターミナルの旭川駅の南側には忠別川が流れている。駅の東側で忠別川を渡る橋は、氷点橋という。氷点橋を渡る最中にまっすぐ正面を見れば、神居山の山並みが横たわる。
橋を渡った先は、「神楽」といういかにも縁起の良さそうな名を持つ住宅地。真ん中を国道237号が貫いて、道の駅やクリスタルパークなどの文化施設も置かれている。まったく碁盤の目に整えられた、歩きやすく、また美しい町並みだ。
そして、この神楽の町を抜けてゆくと、見本林の森が待ち受けて、さらにその先には美瑛川が流れる。
三浦綾子の代表作『氷点』は、この美瑛川の河川敷で辻口家の長女でわずか3歳のルリ子が殺されて見つかるところから、物語が動き出す。『氷点』は戦争が終わってまもない時期の旭川が舞台の作品だ。読み進めていくと、まっすぐに育ってゆく陽子のけなげさに煩悶することになるのだが、そのあたりは実際に読んでいただくとして、問題は『氷点』の頃の旭川だ。
北海道“じつは第2の都市のターミナル”「旭川」には何がある?
戦後まもない時期の旭川には、まだ氷点橋は架かっていない。そもそも、氷点橋という名が『氷点』から頂いたものだ。いまは旭川駅の南側に氷点橋だけでなくクリスタル橋と忠別橋が架かる。
しかし、昔からあった橋は忠別橋だけだ。つまり、忠別川と美瑛川の間に広がる市街地は、戦後になって開発が進んだエリア、ということになる。いったい、旭川という北海道第2の都市は、どのように形作られたのだろうか。そして、いまの旭川とはどのような町なのだろうか。それを探して、旭川の町を歩いた。
旭川駅は、北海道を代表する大動脈・函館本線の終着駅だ。そして、ここから稚内に向けては宗谷本線、北見・網走に向けては石北本線が分かれ、南には富良野線が走る。大雪山系や石狩山地、北見山地に囲まれた上川盆地の中心都市のターミナルである。