(「なぜ英語には「伊達メガネ」の訳語が存在しないのか」から続く)
オプテックジャパンの手掛ける「アイヴァン 7285」などの自社ブランドは、日本が世界に誇るメガネ産地・鯖江の技術なしには成り立たない。日本のモノづくりの魅力を世界に発信したいと語る山本社長から見た、産地の今とは。
高級ブランドを支える鯖江の技術
――2017年には、「10 eyevan(テン アイヴァン)」という、アイヴァン 7285よりさらにハイエンドな新レーベルもスタートしました。
山本 この10 アイヴァンは、細部に徹底的にこだわったモノ作りを行ないました。3年以上の歳月をかけて吟味・考察した、10個のオリジナルパーツでメガネを構成しています。ですから、パーツの一つひとつに語れるバックストーリーがある。この10 アイヴァンはもちろん、アイヴァン 7285も、鯖江の技術なしには成り立ちません。
――やはり高度な技術といえば鯖江なんですね。
山本 はい。タオルの今治やジーンズの児島など日本には世界に誇れる産地がありますが、鯖江を中心とした福井も世界に誇れるメガネの産地です。
もともと鯖江は、増永五左衛門という増永眼鏡の創業者が大阪から福井にメガネ作りの技術を持ち帰り、冬場の農閑期の副業としてメガネを作り始めたことが産地としての始まりです。分業制が特徴で、各工程をいくつもの工房や工場で分担してひとつのメガネを作り上げています。プラスチックの板から枠を切り出すところ、パーツのロウ付けをするところ、フレームを磨くところなど、工程がものすごく細分化されている。一貫生産できる大きな工場もありますが、基本的には分業で、なおかつ工程数も非常に多い。街全体がひとつの工場のような形で発展してきた歴史があります。
――海外における鯖江の知名度や評価はいかがですか。
山本 非常に高く評価されていることを実感します。世界的なファッションブランドのフレームでもメイドインジャパンを謳っているところがありますし、海外のメガネ専業ブランドにおいても、高級ブランドと位置付けられているところの多くは、鯖江で生産しています。
――やはりそれも、技術力の高さゆえでしょうか。
山本 はい。なかでも手作業の多さでしょう。一つのメガネを作るのにかなり職人の手仕事が入っていて、これは他国にはない細やかさです。なおかつ検品も厳しい。パッと見ではわからない傷でも、一度はじいて磨き直しするのが当たり前です。一方で、我々が輸入しているフレームについても傷があるものは返品するんですが、「そんな傷は誰も見ないし、使ったらすぐに傷がつくじゃないか」と本国から言われたりする。この繊細さは、やはり日本人の国民性なのでしょうね。メガネは精密機器のようなものですから、この繊細な感覚を含めて高く評価されています。
――その繊細さは、メガネにも表れるのでしょうか。
山本 もちろんです。たとえばプラスチックフレームでいえば、前枠とテンプル(つる)のつなぎ目となる「合口」と言われる箇所があります。テンプルを開いたとき、このつなぎ目がわからないぐらいピタリと合わさるのは、精度の高さや磨きの丁寧さの賜物です。
――アイヴァンを手掛ける工場は、長いお付き合いなのですか。
山本 そうですね。主力な工場は30年以上お付き合いしているところが多いです。