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「女子バレーには女性マネが絶対必要」パリでのメダル獲得に期待が高まる…日本代表チームのために揃えた“こだわりのスタッフ体制”

『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』より#3

5時間前

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ, 読書

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 その直後に行われた北京オリンピック。解説の仕事が終わり、日本食でも食べに行こうと思っていたら、体育館の外で偶然、川北に出くわした。これも何かの縁。いっしょにご飯を食べることになった。

 その頃、久光製薬がアメリカ代表のローガン・トムと契約したこともあって、彼女の情報を聞いたのだが、それ以上におもしろかったのが川北のこれまでのキャリアだった。「ところで、きみはオリンピックのあとどうするの?」と訊ねると、「まだ決まってません」と言う。「だったら、ローガンといっしょにコーチ兼通訳で久光に来てくれよ」「え!? 僕でいいんですか」ということで、久光への加入が決まったのである。

 彼の最大の長所はコミュニケーションスキルだ。アメリカでの経験が長いから、選手を楽しませながら練習するコツを心得ている。英語が話せて、世界のバレー界に人脈も持っている。これは日本代表にも欠かせない人材だと思い、私が代表監督になると同時に、代表でもコーチになってもらった次第だ。

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 彼はその後、木村沙織の移籍に合わせてトルコのワクフバンクでもコーチを経験。リオオリンピックのあとは、Vリーグのデンソーエアリービーズの監督に就任した。監督としても手腕を発揮していたのだが、今回、第二次眞鍋ジャパン発足にあたって、お願いして再び代表のコーチになってもらった。

マネージャー宮﨑さとみとの信頼関係

 もうひとり、私の片腕的な存在がマネージャーの宮﨑さとみだ。彼女は神戸の出身で、高校時代は強豪の須磨ノ浦高校でキャプテンを務めていた。大学までプレーを続け、卒業後は神戸を本拠地とするVリーグのオレンジアタッカーズでチームマネージャーとなった。

 しかし、チームの経営状態が悪化。2000年に久光製薬がスポンサーにつくことになり、新たに久光製薬スプリングアタッカーズとして再出発することになった。そのチームが久光製薬スプリングスとなり、2005年に私が監督に就任した。その縁で宮﨑と知り合うことになったのだ。

 宮﨑はとにかく仕事がテキパキしている。遠征や合宿の手配、取材の調整などは彼女に任せておけば安心。選手たちの気持ちも理解し、アドバイスや生活指導もしてくれる。男性監督の私が気づかない部分まで目配りしてくれて、ときには忖度なしで厳しい意見も言ってくれる。ありがたい存在である。

 最初に代表監督になったとき、彼女にはスタッフに入ってもらった。ただ、その最初の大会で、彼女はらしくないミスをした。試合前にメンバー表の提出を忘れたのだ。幸い試合が続行され、チームも勝利した。「本当にすみません」と謝る彼女に、私は「勝ったんだから、もうええよ。これからはこういうミスもしないやろう」と言って、いっさい怒らなかったそうだ(私は覚えていないのだが)。それ以来、宮﨑は「この人が監督をやっているかぎりはついていこう」と思ってくれているらしい。

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