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「女子バレーには女性マネが絶対必要」パリでのメダル獲得に期待が高まる…日本代表チームのために揃えた“こだわりのスタッフ体制”

『眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する』より#3

5時間前

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, スポーツ, 読書

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コロナ禍でのコミュニケーションの苦労

 前回の8年間の監督時代は、毎日、全スタッフによるミーティングを行っていた。といっても重苦しいものではない。夜、それぞれの仕事が終わったあと、三々五々ミーティングルームに集まる。そして、ビールを飲みながら、その日あった出来事をみんなで報告し合い、情報を共有するようにしていたのだ。

 たとえば、コーチと選手がマンツーマンで練習していた時、言い合いになって、険悪な雰囲気になってしまったとする。そういうときも、情報を共有しておけば、別のコーチが「明日、俺がその選手をフォローしておくよ」といった解決の仕方ができる。私がマイクロマネジメントしなくても、スタッフ同士で助け合って自律的に処理してくれるのだ。そうなるとチームはうまく回り出す。

 ところが、今回代表監督になってからは、そのコミュニケーションの面で苦労することになった。

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 ひとつにはコロナ禍の影響があった。最初にチームが集まったのは2022年の春。ワクチン接種が進み、緊急事態宣言こそ出なくなっていたが、まん延防止等重点措置が終わったばかり。代表チームで感染が広がれば、活動に支障が出る。当然、みんなで集まってお酒を飲むのは自粛せざるをえなかった。

 もうひとつは私の個人的な事情だ。現役時代からさんざん酒を飲んできたせいか、健康診断の数値が悪化し、体重も過去最高を更新してしまったのである。さすがに医者からも注意され、禁酒することになった。2023年にコロナ禍が明けてからも、私の禁酒は続いた。

 コロナ禍と禁酒。2つの理由から、夜のミーティングはなくし、夕食後は早めに寝るようにした。おかげで私自身は体重も減り、血液検査の数値も改善した。でも、それと反比例するように、チーム内のコミュニケーションに問題が生じ始めていた。

日頃のメンテナンスが大事な人間関係

 あるときマネージャーの宮﨑が「眞鍋さん、スタッフのコミュニケーションが少なすぎますよ」と言ってきた。彼女は観察眼が鋭く、チーム内の人間関係をじつによく把握している。その宮﨑が言うのだから間違いない。スタッフの中核は昔なじみのメンバーだが、半分は新しいメンバーだ。全員が理解し合っているわけではない。自分の問題に気を取られて、そこに気づいていなかった。

「しまった!」と思い、2023年のオリンピック予選前からミーティングを増やすことにした。だが、人間関係は常日頃のメンテナンスが大事。急にミーティングを増やしても、すぐにうまくいくものではない。この点は大いに反省した。

 もちろん、昼間のミーティングはしっかりやっていたのだが、それだけでは微妙な人間関係のすり合わせはできない。昭和的な“飲み二ケーション”にも効果があったんだなあ……とあらためて思った次第。2024年のオリンピックに向けては、あらためてコミュニケーションをテーマに掲げ、しっかり取り組もうと思っている。

眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する

眞鍋の兵法 日本女子バレーは復活する

眞鍋 政義

文藝春秋

2024年5月1日 発売

「女子バレーには女性マネが絶対必要」パリでのメダル獲得に期待が高まる…日本代表チームのために揃えた“こだわりのスタッフ体制”

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