自分が何歳まで長生きできるかは誰にもわからない。それだけに年金を繰り上げるのが有利か、繰り下げるのが有利かを判断するのは難しい。税理士の板倉京さんは「何歳まで長生きすれば得できるのか、損益分岐点を数字で確認すれば、判断しやすくなる」という――。
年金の給付水準は物価上昇に追いつかない
今、日本の物価は上がり続けています。
食料品、電気・ガス代など、必要不可欠なモノの値段があがり、生活に不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
さすがに国も「賃上げ」に本腰を入れ始めたようで、働く人の給与は少しずつ上がり始めています。
現役世代はこれから「もしかしたら」物価に対応できるような賃上げが期待できるかもしれません。
しかし、現役を退いた年金受給者はどうでしょうか。年金額は、物価や現役世代の給与があがっても、それに直結して上がることはありません。
年金額の決定に使用される「マクロ経済スライド」は、賃金や物価上昇による改定率から、現役世代の減少や平均余命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くことによって、年金の給付水準を調整する仕組み。
つまり、物価や現役世代の給与が上がっても、超高齢化社会が進む日本では、年金がそれに追いつくことはまずないというわけです。
年金は繰り上げと繰り下げのどちらが有利か
インフレにより手持ちの現預金の価値は目減り、入ってくる年金も物価高には対応できない。それが、年金受給者の現実です。そうなると、年金は少しでも有利に受け取りたいところ。そこで気になるのが「年金は何歳から受け取るのがオトクなのか」ということです。
年金の受取開始は原則65歳ですが、60~75歳の間で自由に選ぶことができ、開始年齢によりもらえる金額が変わります。
65歳より早く受け取る「繰り下げ」受給は、早く受け取る代わりに年金年額が減ります。
65歳より遅く受け取る「繰り下げ」受給は、遅く受け取る代わりに年金年額が増えます。