文春オンライン

麻薬取締官から「スパイになってくれないか?」と…“どんなクスリも扱った”元大物密売人(63)が語る、薬物捜査に協力した理由

麻薬取締官のエス(スパイ)となった男 #2

12時間前

genre : ニュース, 社会

note

身に覚えのない銃刀法違反容疑で逮捕された経緯

 だがそのころ、今度はカルロスが、まったく身に覚えのない銃刀法違反容疑で大阪府警の捜索を受けた。一緒にいた女性が覚醒剤を所持しており、共同所持の容疑で逮捕された。さらに偽造パスポートも30冊近く見つかり、旅券法違反でも摘発された。カルロスはこう説明する。

「俺、アメリカに入国できないでしょう? そこまでして入りたい国じゃないけど、ハワイの観光客とか、ビーチで立ってる売春婦たちとかには全部、俺が卸してたんですよ。あそこはロス・セタス(メキシコの麻薬組織)のシマだった。そこの売り上げが良かったんですよね。1日5000ドルぐらいあって。あれ捨てちゃあかんて思って、そのパスポートで行ってたんですね。おまわりには喋らなかったけど」

 カルロスは合わせて懲役2年8カ月の実刑を受け、神戸刑務所に収監された。

ADVERTISEMENT

神戸刑務所を出所後、またすぐに捕まったワケ

 2007年3月に出所すると、すぐにブラジル人のスタッフたちが迎えに来た。麻薬密輸の中心地として知られるパラグアイの都市ペドロ・フアン・カバジェロと国境を接するブラジルの街を本拠にして、日本の和歌山県にコカインを送る計画が進行していたのだ。

 カルロスは言う。

「ブラジルの舎弟たちを通じて、現地の郵便局長に賄賂を握らせたんです。それで、封筒に10グラムずつ入れて、1日100通ぐらい送らせたんです。でも1カ月ぐらいたったら、急に捕まった。

 実は、その郵便局長の部下の副局長が、俺にも賄賂くれって言い出したんです。それを舎弟が断っちゃったんですよ。すると、その副局長がインターポールにチンコロ(密告)しちゃったんです。舎弟が俺に一言、言ってくれればね。たかだか10万円ぐらいの金を渋ったおかげで、とんだことに……」

 2008年1月の和歌山地裁の判決によると、起訴されたのは封筒16通分で計約160グラムのコカインについてだった。

写真はイメージ ©Ungvar/イメージマート

ヤメ検(元検事)の弁護士が検事と取引

「何キロ分とかだったらもう、とんでもない年数の懲役になるかもしれないと、目の前が真っ暗になった。でも、弁護士の力があったんだよ。俺がブラジルに滞在してる期間に、日本に送ってるものに関してだけ、起訴されたんです。それ以外は不起訴になった。

 ヤメ検(元検事)の弁護士先生が検事と取引したわけです。俺は裁判で闘うつもりだったんだけど、こちら側が問題になった分量の件を認めたら、他のことには一切触らないでいてくれると言ってね」

 判決は懲役6年、罰金200万円。すぐに罰金を支払い、大阪刑務所に収監された。カルロスは46歳になっていた。

関連記事