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五輪はアスリートを大きく成長させてくれる舞台

――あらためて、奥原選手にとって五輪はどんな舞台でしたか。

奥原 リオ五輪の時は怖いもの知らずでした。言ってしまえば、まったく周りが見えていなくて自分中心主義なところもあった。自分の理想に向かって結果を出すことだけにフォーカスしていました。だから、シングルスで日本女子初の銅メダルを獲得したことを周りの方は喜んでくださっているのに、私は負けたことが悔しくて、表彰台でも仏頂面でした。今考えれば、アスリートとしては未熟だったと思います。

リオ五輪での奥原選手 ©JMPA

 東京五輪はアスリートの存在価値、あるいはスポーツの持つ力を改めて認識した大会でした。コロナ禍に見舞われた当初は世の中がこんな大変な時期に、出場を願うのはアスリートの単なるエゴではないかと悩んだこともありましたが、実際に開催されると、アスリートの活躍はこんなに世の中にエネルギーを与えられるんだということが分かったし、その一方で、スポーツは世の中に支えられている、ということも分かりましたね。

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 そしてパリに向かった3年間は、挑戦する過程にも大きな意味があることを知った大事な期間でした。それまでは結果至上主義で、アスリートである以上結果を出さなければ価値はないと考えていて。

 でも、パリに向かう過程をコミュニティサイトで包み隠さず発信するようにしたところ、たとえ自分の弱さを見せたとしても、こんなにも賛同し応援してくださる人がいるということに気づかされました。

©AFP=時事通信社

 五輪はやはり、アスリートを大きく成長させてくれますね。パリもみんなを必ずジャンプアップさせてくれると思います。

――これからはどんな競技生活を?

奥原 まだラケットを置くつもりはないですよ(笑)。ようやく体のコンディションも上がってきたので、ここからまた世界のトップに食い込めるか挑戦したい。

 東京五輪を終えてからパリまで、特に最初の2年間はまさに絶望で、ずっとどん底でもがいていました。何度も逃げられるタイミングはあったけど、振り返ってみれば、逃げなくて本当によかった。今の私には新しい希望が溢れています。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。