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「オムツのウンチを投げる」言葉をもたない障害の重い子が里親の愛情で育ち、中学卒業時に先生に言った一言

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genre : ライフ, 社会, 教育

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そのほか、食費、被服費、日用品代に子どものお小遣いなど、里子の生活にかかる一般生活費が、乳児1人あたり6万2020円、乳児以外5万3710円が毎月支給されるほか、教育費、医療費など、自治体による、さまざまな加算がある。このように東京都は加算が高いため、坂本さんも19人を預かるということが現実に叶ったのかなと思う。

一方、子どもの心身の成長を考えるとそのつど必要になる塾代(中学からは支給される)やレジャー代などのもろもろの費用は含まれないため、里子が大きくなるごとに家計の負担が増えたり、支給はされるものの立て替える期間があったり、自治体によっては加算が低かったりするのが、国内で里親制度が進まない一因になっているのかもしれない。

ちなみに養子縁組には実親との親子関係が消滅せず、実親の名前も戸籍に記載され、続柄が「養子(養女)」と記載される「普通養子縁組」と、実親との関係が消滅し、戸籍の続柄は「長男(長女)」と記載される「特別養子縁組」があるなど、調べてみると複雑で、ニュースでは一括で「里親」と表現されるが、里親と実親のトラブルの背景にもさまざまな事情があることが想像できる。

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坂本家から巣立った里子たちのその後

これまで巣立っていった19人の里子のうち、何名かには何度か取材し、その後の様子を聞くなどしている。

例えば3歳で坂本家に来た広己くん(28歳)は今、九州の離島で公務員になり、生活相談にのったり、支援や援助を行ったりするソーシャルワークの業務に就いている。以前取材したとき、彼は「生みの母の顔は思い出せない」と語っていた。

今から約25年前、通報されて児相職員が駆けつけたアパートには、幼い広己くん一人だけが取り残されていたという。

「母は、シングルマザーだったと思います。もちろん父親というのもいたんでしょうが、母は一人だった。当時にもう少し、シングルマザーへの支援があったなら、また今の僕と母の関係は違ったのかなぁって……」(広己くん)

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