すごいよ、ドラマ『新宿野戦病院』。ぼっけえ、おもしれえ。脚本、クドカンさんだから、もんげえ笑えるの当たり前だけどな。
本誌エッセイで、宮藤さん、「感想を欲しています」と記してた。正直だね。俳優、物書き、演奏者。それと美容整形した人とか、みんな「感想」欲してる。
感想はさ、丁寧さよりもむしろスピードが大事かもと書いてもいたな。三人の輪番制なので遅れたけど、速攻の感想です。
東洋一の歓楽街、歌舞伎町の隅にある「聖まごころ病院」に、顔も声も動きも、やたらエネルギッシュな女性が登場する。アメリカ軍の軍医経験が十年以上あるヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)。ポジティヴかつ合理的で、手術は雑だが、手際がいいから、並の医者なら手足切断の患者でも、切らずにすむ。
小池栄子、ぴったり。コロナのころ、小池都知事はやたら“夜の街”の危険を煽っとったけど、ま、ある種“戦場”の街で決断早く腹を開けて内臓とりだすタフな女医をやらせたら絵になるの。
同僚になった美容皮膚科の高峰享(仲野太賀)は彼女と違って、金と港区女子との飲みしか興味ない。
演出の河毛俊作氏からタイトルを示された宮藤氏は、最近は見ない言葉だけど、何か力を感じる的なこと書いてた気がする。
野戦病院っていったら、ベトナム戦争だよ、アメリカ映画にとっちゃ。悪党フランコと闘ったスペイン市民戦争にも出てきたが。
王子野戦病院って名も浮かんだ。ベトナムから傷病兵が送られ、感染症が蔓延したらどうする、と周辺住民は猛反対し、浪人生のおれも病院前で座りこんだ。機動隊に手荒くゴボウ抜きされ、逃げ惑う学生や野次馬を病院前の優しい御家族が、家に匿ってくれた。
北区の王子にも野戦病院があって、ベトナムの戦場とは繋がっていた。
新宿の戦場。体を売って病気をもらってでもホストに貢ぐ。母親の男に犯される少女たちはオーバードーズを繰り返す。そんな子たちや、チャラい美容医師の享らに、人の命は戦場では平等じゃ、金持ちも貧乏人もねえ。ぼっけえ怖い体験と信念を、英語と岡山弁のチャンポンで喋る小池栄子は文句なしに格好いい。
カネと体を搾取される行き場のないトー横キッズを助けるNPO法人を運営する、橋本愛が演じる南舞もクールなんだ。舞はM男を縛って稼ぐ高級ボンデージ嬢だ。ホストに貢ぐ風俗嬢に、アナタが自分のスペックを使って欲望を満たすのは間違いじゃないと告げる舞。彼女はM男が喜んで上納する金でNPOを支える。
ヨウコと舞の押しつけがましくない信念で、欲まみれの美容医師が、医療との向き合いかたを変えていく姿が見どころだ。
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『新宿野戦病院』
フジテレビ 水 22:00~
https://www.fujitv.co.jp/shinjuku-yasen/