ちなみに、側近Xは特別な資格を持たない一般事務職員である。現時点で判明しているだけで、2015年から8年間で、至誠会は合計1億1366万円の給与を支払っていた。また、岩本氏も2013年から6年間にわたり「顧問料」の名目で、合計約2000万円を得ていたことも分かっている。
去年、岩本氏は至誠会の会長を解任され、体制が変わった至誠会から、側近Xの分と合わせて報酬の返還請求の裁判を起こされている。
第三者委員会が問題視する「第二の調査対象」
第二の調査対象が、「内部統制、ガバナンス上の問題」である。
東京女子医大は、この3年間ほどで一気に医療崩壊が進行して、深刻な危機に陥っている。医療ミスが頻発して、集中治療室では死亡事故も発生した(#16)。こうした混乱の起点となったのが、小児集中治療室のPICUを、経営陣の不可解な判断で解体したことである。
2014年に鎮静薬プロポフォールを大量に投与して、当時2歳の男児を死亡させた事件(現在、業務上過失致死罪で担当医が公判中)を受けて、尊い命に対する責任と再発防止の観点から、PICUは設置された。カナダの大学病院に勤務していた医師など、海外から3人の専門医を呼び寄せて、PICUは2021年7月にスタートしたが、採算性や専門医の給与を理由に丸学長らが難色を示して、設立から約半年でPICUは解体されてしまったのである。
「第三者委員会は、PICUを解体すべきではなかった、とはっきり指摘していました。PICUは私たちにとって、義務であり責任ですから、採算性や医師の給与を理由に解体するなんて、あり得ません。
女子医大のガバナンスについては、岩本先生に権限が集中していることに問題があり、丸義朗学長や他の理事たちも、本来の役割を果たさなかったと認定していました。
そして、女子医大の理事会は解散すべきという提言には衝撃を受けました。名指しこそしていませんでしたが、理事会の解散ということは、実質的に岩本先生に対する辞任勧告ですから」(同前)