癌の宣告を受けてからつけ始めたという日記帳を見ながら、闘病生活を振り返る見栄晴さん(57)。

 見栄晴さんがかかった下咽頭がんは進行が速く、ステージ4という進行度も含めてすぐに治療に入る必要があった。

 仕事の整理、入院、そして新たな腫瘍が発見され……。あまりに過酷な闘病生活はどんなものだったのか。

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見栄晴さん ©文藝春秋 撮影・石川啓次

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誰もが驚いた「生放送での癌告白」

――癌の発覚から、すぐに治療に入ったのでしょうか。

見栄晴 1月18日に治療の方針が決まった段階で、いつ入院して治療を始めるかって話になったんです。

 そのとき最初に頭に浮かんだのは、25年以上MCをやらせてもらってる『競馬予想TV!』のこと。僕、それまで1回しか休んだことがなかったんですよ。

 今思うと不思議なくらい前向きだったんですけど、不安だったのは癌が治ることよりも、「治った後に番組に戻らせてもらえるのか」っていうことでした。病院の先生に番組のことも説明して「最短でいつ戻れますか?」って聞きました。そのときは、順調に行って5月の頭ぐらいと言われたかな。

――生放送での癌告白は多くの人が驚きました。

見栄晴 番組のプロデューサーに直接電話して病気のことを伝え、入院前最後の出演で、番組の最後に3分間もらって、自分の言葉で癌のこと、入院すること、戻ってきたいという気持ちを伝えさせてもらいました。

 生放送で公共の電波を使って自分の病気を報告するのって変だし、その時点では治療も何も始まってないから、戻ってこれるように頑張るとしか言えなかったんですけど。でもプロデューサーも「見栄晴さんが治ったタイミングでいつでも戻ってきてください」と言ってくれて、治ったら番組に戻れるっていうのが一番のモチベーションだったかな。

 

「正直、競馬場ではビールも飲んでました。嫁も文句を言わなかったですね」

――お友達に心配されたりはしましたか?

見栄晴 実はあの放送の翌日に、もともとプライベートで競馬場に遊びに行く予定があったんです。入院までまだ数日あったので予定通り競馬場へ行ったら、会った人みんなに「大丈夫?」って声をかけられました。武豊騎手が僕のほうへ近づいてきてくれて、喉を指しながら心配してくれたり。 「これはちょっと競馬場なんて行ってる場合じゃねえか」と思いつつ、でも怪我とかではないので普通に動けるんですよね。

――そのとき、体調のツラさなどは?

見栄晴 何にもないの。喉が痛かったからタバコは吸わなかったけど、正直、競馬場ではビールも飲んでました(笑)。入院前までだから、嫁もそれには文句を言わなかったですね。