日本側の作戦はかなりの効果を上げたのだが……
午前7時30分頃、無数の上陸用船艇や水陸両用車が、西浜の海岸線から約350~700メートル沖の付近にあるリーフ(暗礁)に向かって接近してきた。海上からの艦砲射撃も継続されていたが、日本軍の守備隊は引き続き塹壕などに身を隠してこれに耐えていた。日本軍はまだ反撃に出ない。日本側はなるべく敵を引きつけてから、一気に迎撃する作戦を採っていた。
海岸線に向かって一挙に迫ってきた上陸部隊の速度は、リーフの付近で緩やかになった。中にはリーフを乗り越えることが難しい船艇もあった。
日本側はこのリーフの付近に、あらかじめ無数の機雷を敷設していた。やがて、この機雷が大きな爆音を立て始める。機雷に触れた船艇は、次々と大破していった。日本側のこの作戦は、かなりの効果を上げた。
しかし、午前8時頃、米軍は隊形を整理し、アムトラック(LVT。水陸両用トラクター)といった最新の水陸両用兵器を前面に押し出す布陣をとった。アムトラックは続々とリーフを乗り越えて、海岸線に接近した。天候はにわかに崩れ、この地域特有のスコールが降った。
上陸部隊の先頭がいよいよ海岸線から100メートルほどにまで近づいてきたその時、待ち構えていた日本軍の速射砲などがついに火を噴いた。充分に敵を引きつけてからの一斉射撃である。さらに、山岳部の天山などに備えられていた野砲や十センチ榴弾砲も、轟音と共に砲火を浴びせ始めた。
米軍は大混乱に。海岸線一帯は一挙に火の海と化した
米軍側はこれまでの艦砲射撃と空爆の結果、日本軍の守備隊はすでに壊滅的な状況にあると予測していた。しかし、強固な地下壕によって、日本軍はいまだ充分な戦力を維持していたのである。
上陸部隊は大いに動揺し、そして深刻な混乱に陥った。自慢のアムトラックや上陸用船艇が次々と被弾し、炎上していく。海岸線一帯は一挙に火の海と化した。このような戦況を確認した日本側の通信兵は、
「ウメ、ウメ、ウメ」
と連送した。「われ敵を撃退せり」の意味である。