「韓国語を使ったパン選手は大丈夫か」韓国メディアから心配の声

 韓国メディアは「ファイティングは韓国語だから、それを使ったパン選手は大丈夫か」と心配しつつも、国境を超えた友情を称えている。現地時間8日には、両選手はボクシング女子54キロ級の表彰台でともに「ビクトリー・セルフィ」に収まった。

 同じように、敵である米国選手に拍手を送った体操女子のアン・チャンオク選手も責任を問われるかもしれない。

 韓国の文化との接触に厳しい北朝鮮だが、実は、韓国製の食品や化粧品などは質の良さから北朝鮮国内で人気がある。かならずハングルなどを削り取ってから使う。

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韓国選手を“鼓舞”した北朝鮮のパン・チョルミ選手 ©AFP=時事

 米政府系放送局「ラジオフリーアジア(RFA)」は8日、北朝鮮代表団が、国際オリンピック委員会(IOC)が各国に割り当てたサムスン製のスマホを一括して受け取ったと報道した。選手に分配するわけもなく、人の目を気にしない金正恩氏らロイヤルファミリーに献上するか、転売して外貨稼ぎをするか、はたまた電子部品を軍事的に利用するか、といったところだろう。

「行動を苦々しく感じているのは間違いない」

 元労働党幹部は「当局はパン選手やアン選手に、見せしめ的な処罰は下さないだろう」と語る。「韓国敵視政策を巡って、北朝鮮内は若い人を中心に動揺が広がっている。やりすぎると、逆に反発を買いかねないからだ」と語る。「もちろん、当局が2人の行動を苦々しく感じているのは間違いない。場合によっては、内部で他にわからないように処罰するかもしれない」という。

 特に、金日奕(キムイルヒョク)氏が語ったように、最近の北朝鮮は韓国による「文化・情報侵略」を極度に恐れている。2020年以降、反動思想文化排撃法、青年教養保障法、平壌文化語保護法などを立て続けに制定した。いずれも、中身は、韓国などの西側文化に親しみ、真似をしたり、取り入れたりしようとする行為を厳罰で取り締まる内容だ。

地下鉄構内に掲示された労働新聞を見入るピョンヤン市民 ©時事通信

 金日奕(キムイルヒョク)氏は自身も脱北するまで、韓国の流行歌を毎日のように歌っていた。周囲がみな、堂々と歌うので、脱北するまで北朝鮮の歌だと思っていたほどだという。金氏は「北の政権が最も恐れるのが韓国文化です。韓国文化の流入はすなわち、北政権の崩壊だと言っても過言ではありません」とまで語る。

 労働新聞は2日、卓球混合ダブルスで銀メダルを獲得したことは伝えた。一部の選手はパリから帰国の途に就いた。その後、選手たちがどう扱われるのかはまだわからない。