“敵国”に対する北朝鮮選手の信じられないラフプレー
昨年秋、中国・杭州で開かれたアジア大会で、北朝鮮選手団の日韓両国に対する敵対的な行動が目立った。
10月1日の男子サッカー準々決勝の対日本戦では、北朝鮮選手がラフプレーを繰り返し、イエローカードは6枚を数えた。
9月25日に行われた射撃競技の男子団体種目表彰式では、優勝した韓国代表と3位のインドネシア代表が国旗掲揚を見守るなか、2位の北朝鮮選手団は顔を背け、韓国代表と一緒の写真撮影を拒否した。朝鮮中央通信も、女子サッカー準々決勝で対戦した韓国代表を「傀儡チーム」とあざけった。
代表団には外交官や新聞記者などに身分を偽装した国家保衛省(秘密警察)の要員が必ず同行している。今回のパリ五輪でも、北朝鮮の朝鮮中央テレビが五輪の試合を録画放送しているが、米国の星条旗をモザイク処理した画面が確認されている。
だからパリ五輪でも、北朝鮮選手はできる限り、韓国人を避けるように教育されているはずである。韓国人との不必要な接触は、「敵は変わり得ない敵だ」と決めつける最高指導者の怒りを買いかねないことは選手もわかっているからだ。
これまで決して起きなかったであろう南北選手の交流
北朝鮮を逃れた元朝鮮労働党幹部は「国際大会に出る選手はエリートであり思想的な背景に合格した人たち。彼らは国内での地位を維持することが最大の目標で、あとは当局に言われた通りに行動する」と話す。「当局が南北合同チームを作れと言えば、韓国選手と親しくするし、敵だと言われれば無視する。それだけだ」という。
ただパリ五輪では、これまででは決して起きなかったであろう北朝鮮選手と韓国選手の交流が生まれているのも事実だ。
パリ五輪のボクシング女子54キロ級に出場した韓国のイム・エジ選手は、銅メダルが確定した後、同じく銅メダルを獲得した北朝鮮のパン・チョルミ選手との交流について明かした。
パン選手が選手村で、イム選手に「(日本で使うファイトと同じ意味の)ファイティング」と声をかけたという。2人は昨秋の杭州アジア大会でも対決したライバルでイム選手もパン選手に「がんばって、決勝で会おう」と伝えたという。