金メダリストは16歳の女子高校生

 女子10mエアライフルでは、韓国のパン・ヒョジンが中国の黄雨婷相手に延長戦のシュートオフまでもつれ込んだ決勝を制して金メダルをゲット。サッカーで例えるなら延長戦での決勝ゴール、野球で例えるなら延長12回でのサヨナラヒットに相当する劇的勝利だった。

 しかも、パン・ヒョジンは中学2年から射撃を始めたという。わずか4年でオリンピック・メダリストになったばかりか、韓国の夏季五輪史上最年少(16歳と313日)金メダリストになったのだから舌を巻かずにはいられない。

女子10mエアライフルで金メダルを獲得したパン・ヒョジン選手16歳 ©AFP=時事

 そして女子25mピストルでは世界ランキング2位のヤン・ジインが、決勝で地元フランスのカミーユ・エジェエフスキと対戦し、シュートオフの末に金メダルを獲得。

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 さらに男子25mラピッドファイアピストルでのチョ・ヨンジェの銀メダル、混合10mエアライフル団体での銀メダルを合わせると、韓国の射撃種目のメダル獲得数は金3個、銀3個で中国に次ぐ全体の2位。東京五輪では銀メダル1個に終わった韓国射撃だが、パリ五輪では文字通りメダルラッシュだったのだ。

射撃は韓国で「(国に)孝行している」種目

 もっとも、韓国では古くから射撃がお家芸のひとつでもあった。韓国初のスポーツ国際大会は1978年に開かれた第42回ISSF世界射撃選手権であるし、1988年ソウル五輪以降は毎回でかならずメダルを獲得してきた。

 韓国ではオリンピックやアジア大会などの国際舞台でメダルを量産したり期待できる種目を、「(国に)孝行している」という意味を込めて「孝子(ヒョジャ)種目」と呼ぶが、韓国射撃はアーチェリーやテコンドーと並ぶ鉄板の「孝子種目」なのだ。

パン・ヒョジン選手のインスタグラムより

競技人口は少なく、日本の半分ほど

 ただ、その競技者人口は決して多くはない。大韓射撃連盟によると、レジャースポーツとして射撃を楽しむライト層も含めてその登録選手数は4858名(男子3298名、女子1560名)。おおよそ1万人はいると言われる日本の半分にも届かない数字だ。

 チーム数も少なく、射撃部がある大学は18校。社会人になるとSK(通信・エネルギー)、KT(通信)、IBK企業銀行、KB銀行などの企業チームと、地方自治体が運営するスポーツ実業団クラブに限られている。

 前述したキム・イェジも所属するのは人口2万5000人の仁実(インシル)郡が出資運営する射撃チームで、普段は全州(チョンジュ)市の自宅から仁実郡庁・射撃練習場までを片道2時間かけて自転車通勤しているという。