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男子体操団体金メダルのリーダーシップ

――小説『俺たちの箱根駅伝』の中でも、とあるセレモニーが印象的に描かれています。

山本 まさにあの場面は泣きましたよ! 作中で大学生ランナーを指導している甲斐監督は、モチベーションを上げるための仕掛けづくりに非常に長けていますよね。選手たちが暗い体育館の中を、「いったい何が起こるんだろう?」と進んでいった先に、あれほどの高揚感に満ちた空間を演出できるリーダーシップというものは、流石だと唸らされました。

 この本を読みながら、今回のオリンピックといちばん重なったのは、実は金メダルを獲った男子体操の団体戦なんです。5人の選手で戦う団体戦で、日本は橋本(大輝)君がエースでしたが、あそこでリーダーシップを持って全員を鼓舞していたのが、キャプテンの萱君でした。自分の競技をやるだけではなく、他の皆にも声を掛けながら、「勝つためのムード」を作り出すところを、箱根駅伝を目指す青葉隼斗君の気遣いに重ねました。

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男子体操の団体戦でキャプテンとしてチームを牽引した萱和磨選手 ⒸJMPA

 僕の中では、男子体操の強化本部長の水鳥寿思代表監督と甲斐監督も被っていて、まさに究極の真剣勝負の現場では、ああいうリーダーシップが求められるんでしょうね。そのすごさというのは、おそらく甲斐監督が商社で世界を相手にしたビジネス経験を持っているという設定の説得性もあって、池井戸さんはきっちりそういうところも理解されて書かれている感じがしました。