しかし神戸山口組は自然減に加えて相次ぐ傘下組織の離脱などもあり2023年時点で約140人へと激減。25対1と大きな差が開いている。前出の捜査幹部は、「神戸側が形勢を逆転できることはないだろう」と述べる。

神戸山口組から相次ぎ離脱...ここでもきっかけはカネだった

 6代目山口組でカネの問題で不満が募り分裂となったのと同様に、神戸山口組でも火種になったのはイレギュラーなカネの徴収だった。

 山健組や宅見組などの神戸山口組の中核5組織が離脱する前の2017年4月、当時の山健組幹部だった織田絆誠がこうした点を批判して一部グループを率いて離脱し、任侠団体山口組を結成、反旗を翻した。

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 任侠団体山口組は後に絆会と名称を変更して活動を続けている。

神戸山口組から織田絆誠への“絶縁状”

 神戸山口組が内部崩壊のように縮小するのにつれて、本格的な対立抗争事件が減少していった。しかし2022年に入ると、優勢なはずの6代目山口組系の幹部が射殺される事件が相次いで発生した。

 2022年1月、水戸市の6代目山口組一心会系の事務所で幹部が拳銃で撃ち殺され、2023年4月には神戸市内でラーメン店店長を兼ねていた6代目山口組の弘道会系組長が射殺された。

 いずれの事件でも逮捕されたのは、絆会若頭の金沢成樹。金沢は2020年9月に、6代目山口組弘道会に移籍しようとしていた絆会幹部も銃撃し重傷を負わせており、3件の事件の容疑で逮捕された。しかし、取り調べには黙秘を通しており詳しい動機は不明のままだ。

3000対60...終息の気配なく10年目に突入

 金沢の動向をウオッチしてきた警察当局のある捜査幹部は、「2件の殺人事件と1件の殺人未遂事件を実行したとなれば裁判では死刑の判断も十分にあり得る」と述べる。

 そのうえで、次のような見解を示した。

「これほどの重大事件を起こしたのは意地のようなものを示したかったのだろう。裁判所の判断はどうなるかは分からないが、厳しい判決が出ても受け入れる覚悟はあるはず。社会一般には忘れ去られるかもしれないが、ヒットマンとしてヤクザの歴史に名を残すことになるのは間違いない。本望だと思っているのかもしれない」

 現在、6代目山口組は、神戸山口組、池田組、絆会との間で対立抗争状態にあると認定されている。暴力団対策法に基づき、それぞれの組織が特定抗争指定暴力団に指定されている。6代目山口組は指定暴力団等に加えトリプル指定状態だ。

 警戒区域でおおむね5人以上で集合するなど違反行為があれば中止命令を経ずに即座に逮捕されるなど活動が厳しく制限されている。

 池田組と絆会の構成員は最新データによると、ともに60人。いまだ3000人以上を抱える6代目山口組との勢力差は大きいが白旗を上げる気配はなく、分裂10年目は乱世の様相で幕を開けた。(敬称略、一部の肩書は当時)