この日は山健組の定例の会合があり、幹部らが集まることは事前に分かっていた。事件を起こした弘道会系幹部は報道陣を装い紛れ込んでいた。

 他にも、神戸山口組系幹部が刃物で襲われて重傷を負うなど6代目山口組側の攻撃が頻発していた。

立て続けの凶悪事件に捜査幹部は...「すべては高山だ」

 6代目山口組側が引き起こす凶悪事件が立て続けに発生したことについて、警察当局の組織犯罪対策を担当している捜査幹部は、「高山の出所の影響が大きい。すべては高山だ」と断定的な口調で指摘する。

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 この捜査幹部は高山を、「知力と武力を兼ね備えた男だ」と評する。

 まずは知力について、「信賞必罰を徹底して組織運営に反映させ、規律を保つことを最重要に考えていることが窺える。さらに、組織の維持のためのシノギ(資金獲得活動)をしっかりと握っているということだ」と強調する。

 名古屋を中心とした高山のシノギについて、6代目山口組の事情に詳しい指定暴力団幹部はこう解説する。

「中部国際空港の工事の利権が大きかった。1000億円以上を手にしたと言われている。砂利や生コン、建設資材その他の調達、ダンプカーでの運搬、諸々の手数料などでカネが落ちる仕組みを作っていったようだ」

「水は高い所から低い所へだが、カネは強い所に吸い込まれる」

 さらに次のように付け加えた。

「力のある組織にはカネが集まり、カネが集まれば若い衆も集まる。組織が大きくなれば、新たなシノギの話も舞い込んでくる。水は高い所から低い所に流れるが、カネは強い所に吸い込まれるのだ」

 前出の捜査幹部が続いて武力について見解を示す。

「高山が刑務所から出てくるというだけで、6代目山口組の傘下組織が次々と事件を引き起こす。そして神戸山口組側では何人も殺害されている。高山に対して(傘下組織は)自らの力を誇示し、功績を認めてもらおうとしていると考えられる」

2020年5月、池田組若頭の前谷祐一郎銃撃事件で道に倒れこむ組員

 警察当局の捜査幹部は、6代目山口組が引き起こした数々の事件のうち特に重大なものについて次のように列挙した。

・神戸山口組池田組若頭、高木昇射殺事件(2016年5月)
・神戸山口組山健組若頭、與則和刺傷事件(2019年4月)
・神戸山口組山健組系組員2人射殺事件(2019年10月)
・神戸山口組最高幹部、古川恵一射殺事件(2019年11月)
・神戸山口組池田組若頭、前谷祐一郎銃撃事件(2020年5月)

 捜査幹部が事件を解説する。

「池田組は資金力が豊富。さらに、6代目山口組の傘下組織の一部を神戸(山口組)側に寝返らせようと工作を行っていた。そこで狙ったとみられる。最初に若頭の高木が殺害され、後任の前谷も2020年に銃撃されて重傷を負った。山健の若頭が刺された事件は、神戸(山口組)側の本丸を狙ったということ。古川殺害は自動小銃を使ったことで心理的な影響も大きかった。殺害方法が残酷だったため神戸(山口組)内部に動揺が広がった。実際にこの事件の後に神戸(山口組)から脱退者が増加した」