1ページ目から読む
2/3ページ目

「誤解され、まっとうに評価されないことに悩んだ時期もある」

 現在の心境・境地というものは、昨日今日、芽生えたわけではない。本書を読めば判るだろうが、このバンドは恵まれた日向の道を歩んできたようで、時に暗がりで躓つまずきもしたのである。桑田に話を聞いていても、時折、話はそんなゾーンへ突入した。

「こう見えても自分は、音楽人として誤解され、まっとうに評価されないことに悩んだ時期を経験している。というか、サザンの活動というのは、それに抗うための歴史だったかもしれない。ただ、歳を重ね、経験を積んだせいか、大衆が持つ“イメージ〞こそが“自分達の本質〞であり、さらには“武器なのではないか?”と考えられるようになった。そのことは大きい。そんな思いが、ここ数年の仕事のスタンスをとても楽にしてくれてるし、昨年の茅ヶ崎ライブにも貫かれていた気がする」

 さらに、彼が正直な気持ちとして話してくれたのは、原由子の存在である。改めて、彼女について訊ねてみると、こんな言葉が返ってきた。

ADVERTISEMENT

桑田佳祐から原由子へのメッセージ

「原さんには私の妻としての部分、子供に対する親の部分、そしてもちろん、46年もやっているバンドの、前人未踏の紅一点のミュージシャンとしての部分がある。彼女はピアニストとして、フレーズ・メーカー、作曲家として、本当に素晴らしいと思う。デビューして4、5年までの時期は、メンバーとの関係や、それ以外にも関わる人々が増えていき、団体活動をしていくなかで僕は疎外感や孤立感を味わうことも多く、そういう時、原さんが相談相手になってくれたし、僕も彼女から相談されたし、色々と話し合ってきた。それは“大勢のなかの二人三脚”ともいえて、これが精神的に大きかった」

 このあと、桑田はある写真の話をした。それは特別なものではなく、先にもふれたように。