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「アジア系の方が多いエリアなら、握り寿司のメニューを多くして、反対に欧米系が多い場所ではロール寿司を増やすなど、ローカライズをしています。例えば、カリフォルニアは売り上げにおける、サイドメニューと寿司の割合が3対7ですが、テキサスは4対6です。さらにテキサス進出の際は、肉寿司など肉系のメニューを多めにしました」

日本の飲食店が米国進出する際、成功のカギを握るのはテキサス州という声がある。アジア系が多く住む西海岸や、先端的な東海岸と比べ日本食への親しみが薄い。さらには伝統的に肉食を好む文化だからだ。海岸沿いだけの展開をする日本食チェーンが多い中で、くら寿司はテキサスで成功したことから、米国展開の勢いに乗ったと言える。

日本式ではなく現地にあわせる

「米国法人CEOの姥一曰く、くら寿司ならではの味やシステムが8割、残りの2割でローカライズすることが、成功の秘訣だそうです」

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商品の価格も州ごとに異なる。最も高いカリフォルニア州やニューヨーク州等の店舗では、1皿3.95ドルの店もあるとか。1ドル150円で換算すると、その価格は何と592円。それでも、他の外食と比較した相対的な安さなどから客足は絶えない。

とはいえ、米国での事業展開は順調だったわけではない。2009年の米国初出店から、さまざまな試行錯誤を繰り返しながら成功パターンをつかんではいたが、そこにコロナ禍が襲う。

「2019年に米国法人がナスダック市場へ上場し、浅草にグローバル旗艦店を開店、さらには台湾法人の上場も控えていたことから、2020年は、われわれは『第2の創業期』として大きな期待を寄せていました。そこにコロナ禍が直撃してしまったのです」

それでもめげずに、アフターコロナへ向けて種まきを行った。具体的には、無理に赤字を埋め合わせるのではなく、投資の期間と割り切ることで、中長期的な反転攻勢を描いた。

例えば、米国では給与支払いとして浸透しているストックオプションなどを用意して、コロナ禍で企業を離れた優秀な人材を確保したことは、現在の好調につながっているという。