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インバウン丼を実体験!

 そこで、その噂のインバウン丼なるものが果たしてどのように受け止められているのか、「千客万来」の開業から1か月ほどした2月末に同施設を訪れてみた。平日の昼前の時間であったが、館内はかなりの混雑。しかし、意外にも外国人観光客の数は少なく、全体の1~2割程度である。

 寿司屋、海鮮食堂、シーフードバーガー屋に肉料理の店……食事処が中心だが包丁の専門店などもあって、バラエティに富んだ店を巡る楽しさがある。海鮮丼を提供する店もいくつかあったが、群を抜いて目立つのは、3階の「フードコートよりどり町屋」に入っている専門店である。メニューは、本マグロ丼が6980円(税込み)、海鮮ちらし丼が6400円。普段高くても1000円以内にランチを抑えている筆者にとっては、バンジージャンプにチャレンジするくらいの勇気が必要な金額である。

 よく見ると、他にも「本マグロと真鯛の紅白丼」(3600円)といった若干リーズナブルなメニューもあるし、さらに2000円台の丼も数種類見つけた……と思ったらそれらのほとんどはミニ丼だった。観察していると、6000円を超す丼を注文する人はいない。ミニ丼を注文する人はちらほらいるが、ラーメン店のミニチャーシュー丼などよりも小ぶりでとても食事にはならない。おそらく他の店のテイクアウトなどと組み合わせて食べるのだろう。

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 そこで気づいたことがある。6000円を超す丼があることで他のメニューが相対的に安く見えるのではないかと。普通ミニ丼を1500~2000円も出して食べないと思うが、6000円を超す丼を出す店のミニ丼なら、モノは試し、食べてみようかという、「撒き餌」になっている可能性がある。

千客万来「江戸辻屋」の海鮮丼

 それでも筆者は初志貫徹、訪問前から注文すると決めていたこの6400円の海鮮ちらし丼を食べてみた。もちろんおいしいが、食べきれないほどネタがのっているわけでもなく、他の店ならほぼ半額で似たメニューを食べられる。もっと言えば、現在勤務している学部の移転前の所在地である房総半島・鴨川市では、有名店でも2000円台で新鮮な海鮮丼が食べられる。もちろん、それらと別次元の価格だからこそ、「インバウン丼」などと呼ばれているのであるが、「豊洲 千客万来」には、ほかにも「究極の蛤らぁ麺御膳」(2600円)や、本マグロそば(1580円)といった他ではなかなか見かけないメニューもある。普通のものが高いニセコと違い、珍しいものがそこそこの価格であることに納得できるのなら、日本人でも楽しめるスポットだと感じた。

 豊洲市場から新橋駅へ戻る帰路のバスからは、築地場外市場の賑わいが目に留まる。築地は豊洲とはうって変わって、客の実に8割程度が外国人である。カニの脚やステーキ串など、その場ですぐ食べられるものを出す店が多く、こちらの値段もなかなかだ。第一章でも触れたが、2口くらいで食べられるサーロインの串が1本5000~6000円する。築地に本店がある「築地うに虎」では、ウニとマグロのトロがこれでもかとのる豪華丼「皇帝」に、1万8000円の価格がついている。これこそ究極の「インバウン丼」であろう。