外国人を主要ターゲットとした飲食店での価格高騰が目立つ。ある施設での一例をあげるとラーメン御膳が2600円、焼いたタラバガニの脚が1本6000円など、数々の高額メニューが用意されているそう。いったいどれほど豪勢な料理を味わえるのか。

 ここでは、城西国際大学で観光学部で教授を務める佐滝剛弘氏の『観光消滅 観光立国の実像と虚像』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋。2024年2月、豊洲に新しく開業した観光施設「豊洲 千客万来」で提供されるメニューを実際に食したもようを紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

© momo.photo/イメージマート

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食の価格までもが高騰する

 富裕層は、ホテルのみならず食事にも金に糸目をつけない。

 それは伝統的な寿司や鰻だけでなく、“外来食”のラーメンやカレーライスにも及ぶ。日本人の多くがラーメンや昼の定食について「1000円の壁」と言っているうちに、外国人が主要な客層の店では別の意味の「価格破壊」が起こっている。いまやスキー客の9割以上が外国人と言われる北海道・ニセコのレストランの価格を見ると、ハンバーガーが2000~2500円、ラーメンもごく普通のもので1500~2000円ほどで、観光地値段というよりは外国のリゾート値段である。

 コロナ前から外国人に人気のあった東京・築地市場。コロナ後に市場が豊洲に移った一方、築地場外市場の店舗の方はそのまま継続しているものも多く、ともに外国人観光客の人気訪問先となっている。豊洲では2024年2月に新たな観光施設「豊洲 千客万来」がオープン。海鮮丼や本まぐろ丼が1杯7000円前後、焼いたタラバガニの脚が1本6000円など、強気の価格設定の店がいくつもある。「インバウン丼」などと揶揄され、盛んに報道されていることはすでによく知られているだろう。

豊洲の「千客万来」のにぎわい

 もちろん、私たちも海外に行き、そこでしか食べられない本場のものに出会えば、高くとも喜んでお金を払う場合はある。観光は「非日常」に身を置く行為であり、普段とは異なる金銭感覚で支出するのは当然だ。まして、ニセコも豊洲も一般的な日本人にとっては「日常」でなく、ある程度高いのはやむを得ない面もある。筆者も、ハワイのワイキキで3000円を超す有名店のパンケーキを行列に並んで注文した経験がある。ホノルルのダウンタウンに行けば価格はかなり庶民的になるとわかっていても、やはりワイキキで食べたいのが観光客というものなのである。