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コミュニケーションとしては失敗

 おそらく、私がお話ししたことであなたがご覧になったのはミラーリングのことではないかと思います。たとえば相手が笑ったら自分も笑う、相手が首を傾げたら自分も傾げるというように相手の動作を真似るなど、自然な形で動作を同じくすることで、こちらに対する親近感を高め、好意を持ってもらえる可能性を上げることができます。

 ただし、真似をするに当たっては相手に気づかれないように自然にする必要があります。あなたと私は偶然同じ形を選択していたのですね、という認知を与えるためです。しかし、あからさまに真似していることがわかれば、効果が半減するどころか逆に不快な感じを与えてしまうことになります。あなたがお隣さんにお感じになった感覚はこの不快感ではなかったでしょうか。

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「行動を真似される」と「服装や持ち物を真似される」の違いよりも、相手に気づかれずに真似するか、気づかれてしまうかで、結果が大きく違ってくるのです。お隣さんは真似していることをあなたに気づかれてしまった時点で、残念ながらコミュニケーションとしては失敗に終わってしまっています。本当はただ仲よくなりたかっただけなのかもしれませんが。

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お隣さんには真似できないようなことをする

 解決法となるとちょっと考えてしまいます。なぜなら、自分の行動を制御することですら大変なのに、他人の行動を制御するのはほぼ不可能だからです。お隣さんの行動をコントロールして、こちらの真似をされないようにする、というのは、自分のこと以外にお隣さんの意思決定もこちらが面倒を見続けるということでもあり、それが可能だとしても、脳は少なくとも倍の出力をしなければならないでしょうから大変しんどいことになります。

 可能な解決策として想定できるものとしては、あなたが、お隣さんには真似できないようなこと、あるいは真似したくないことをするしかないのではないでしょうか。でも、そんな理由で服装や持ち物をお隣さんがなかなか手が出せないであろうハイブランドにしたり、自分の趣味に合わないものにしたりするなんて癪ですよね。