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なぜ笑われているのか分からず、しょっちゅう絶句

 ところが、新宿アルタに行ってみたら、黒板に大きな字で「タモリの花婿アカデミー」と書かれています。その日の出演者はタモリさんのほかに、笑福亭鶴瓶さん、ウッチャンナンチャン。

 私が真面目に話しているのに、みんなで茶化して邪魔をしてくるのです。私も彼らのことをよく知らなかったので、「つるべいさん」とか「ウンチャンナンチャン」と名前を間違うと、そのたびに笑われる。私はなぜ笑われているのか分からないから、しょっちゅう絶句する。その繰り返しでコーナーが長々と続き、後に予定されていた3つのコーナーを全部飛ばしてしまいました。私は途中で頭にきて、目の前にあった水差しの水をかけてやろうと構えたところで、番組が終わりました。

 私をもっとも挑発してきたのはウッチャンナンチャンでしたが、今になって思えば、あの人たちの挑発の仕方はそんなに悪意がなくて、常識の範囲内でしたね。みんなの吹っかけ方が見事だったから、コーナーもたっぷりもったのでしょう。私はちゃんと話をしようと、それこそくそ真面目にやっていたんですけどね。最後に、鶴瓶さんが「新しいスターが誕生しました」と言ったのですが、そのときも何を言われているのか意味が分かりませんでした。

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女の人たちが新宿駅で私を見つけて、手を振ってくれた

 生放送が終わって、スタッフからは嬉しそうに「番組が盛り上がりました」とお礼を言われましたが、私は言いたいことが言えなくて悔しかったのです。落ち込みながらスタジオを出て新宿駅に向かったら、エスカレーターの上の方から「ワーッ!」という声がして、女の人たちがこちらに向かって手を振っています。誰かいるのかなと思って後ろを振り返っても誰もいません。そしたら「田嶋先生!」という声が聞こえました。アルタに来ていた女の人たちが私を見つけて、手を振ってくれたのです。

『笑っていいとも!』の影響は予想以上に大きかった。その日の夜にも、友人と一緒に中華料理店に行こうとしたら、暗がりからいきなり「キャーッ」って声がして、見たら中学生の女の子。その子たちが「先生、今度は何言うの? 面白かったぁー」と言ってくれました。

 女の子たちだけではありません。自宅がある軽井沢へ帰る電車に乗ったとき、夏休み中の男の子たちがズラーッと足を広げて座っていました。そしたら、ひとりが私の顔を見て、とっさに「おい、足閉じろよ」って仲間をこづいています。みんな一斉にこっちを見て、コソコソ足を閉じていました。私が番組で「男はなんで足をかっぴらいて座ってんのよ」と言ったのを見ていたのですね。その子たちが私の言葉にどのくらい共感したのかは分かりませんが、少なくとも反応はしてくれた。