入居者たちとの関係は…
東京のシニアハウスでは、近くの川のほとりを歩いて、途中にある神社に立ち寄ってお参りしたりしています。軽井沢の人とちがって都会の人は挨拶をしてもなかなか返事をしてくれませんね。東京は高層ビルやマンションがずらっと林のように立ち並んでいて、緑しかない軽井沢の風景とは大違いです。でも、一週間のうちに田舎と都会をどちらも体験できるのは、考えようによっては幸せなことかもしれません。
シニアハウスでは、入居されている方々と、とてもいい関係を築けています。三越劇場のコンサートの前は、シニアハウスのスペースを借りて先生を呼んで、社交ダンスの練習をしていました。ここでの友人たちも習いに来てくれて、なかには94歳の女性もいます。その方たちは私のライブにも来てくれて、うれしかったです。男性たちも親切です。なかには奥さんに逃げられた人もいて、女の自立をずっと主張してきた私を恨んだことがあるかもしれないけれど、さすがにもう吹っ切れているみたい。
食事のときにお酒を飲みながら、お話しすることもあります。自分でワインボトルを持ち込んでいる人もいます。私はせいぜいビールと日本酒。じっくり話を聞くと、それぞれの人生にいろんなドラマがあります。私のように、ここを拠点にいくつもの会社の取締役をしている人もいれば、家族のご飯の用意からようやく解放されて、ひとりの食事を楽しんでいる女の人もいる。無口に見える人でも、話し出したらこちらがビックリするくらいよくしゃべってくれます。
高齢者にとっては、自分がかつて社会で活躍したことを人から忘れられるのは一番寂しいでしょう。その人がどういう人だったのかを周りが知らないわけです。だから、自分史を書いて、それをドラマにするなど、自分が生きた軌跡を知ってもらえる機会をつくってあげるといい。その人の背後の人生を知ると、話も弾みます。
シニアハウスが企画してもいいし、これから世の中にはもっと高齢者が増えていくわけですから、自分史を周りと共有できるような企画をするところが出てきたらいいと思います。