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お金のやりとりがない村

『カルト村で生まれました。』(高田かや 著)
『カルト村で生まれました。』(高田かや 著)

 でも、今回は「物は共有で、お金のやりとりが一切なかった村にいたからこその、一般社会に出てから感じたお金にまつわるギャップや笑えるエピソードがあるのでは」と担当編集の方から提案され、テーマをリクエストされて描くことも初めてだったし、「あ、また村のことに触れないといけないのか、村の話は自己紹介程度と考えていたのに、自分の思惑とは違ってきてしまったな」と困惑してしまったんですね。

 担当編集者に求められた「一般社会とのギャップ」も自分ではあまり感じていませんでしたし、両親や夫のふさおさんに聞いてみても、「お金に対しては初めからきっちりしていたよ」と言われ、「お金をテーマにすること自体がそもそも無理なんじゃないの?」と、どんどん弱気になってしまい……。 

 それに私は、村にいた頃から考え方がほかの子とはちょっと違っていたみたいで、村の中で浮いた存在だったんです(笑)。だから、一般社会に出てからの生活や考え方も、きっと村出身のほかの人とはかなり違っていたと思うんですけど、私が本にして発表することで、「村出身の子はみんなこうなんだ」と思われて、迷惑をかけてしまうのではないかという心配もありました。

©高田かや

 そんなモヤモヤとした気持ちで、「お金」というテーマ自体に疑問を持ったままネームを描いていたので、すっかり迷走してしまって……。でも、担当の方とデニーズで雑談をするうちに、クレジットカードや宝くじの話、リメイク料理の話などお金に関するエピソードをいろいろ思い出してきて、なんとか形にすることができました。

 そういえば、「お金」というテーマを提案されたのは、私がデニーズで「おかわり自由でコスパがよい」という理由から、毎回コーヒーしか注文しないということが発端だったんですよ。しかも実はコーヒーが苦手で……(※当時、打ち合わせに利用していたデニーズは飲み放題のドリンクバーを実施していなかった)。デニーズのコーヒーはあまり濃くなかったのでギリギリ飲めましたが(笑)。