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 だが、彼らは日本国内で隠密任務を担っているはずなのに出たがりなのか、チャイナフェスティバル2024年の会場では、都道沿いの場所に堂々と福経促の看板を出して6~7軒も飲食ブースを展開。「いちごスムージー」(800円)、「南昌まぜビーフン」(700円)、豚足(300円)など、限りなくゆるい食べ物を大量に売っていた。

 福経促は対日統戦工作の尖兵の役割を担ういっぽう、団体に加入しているのは普通の中華料理店のおっさんやおばさんたちなのだ。私もおなかがすいたので、彼らの統一戦線工作に資金援助をおこなうことにして、ブースのひとつで臭豆腐を購入する。

チャイナフェスティバル2024の会場で大量に展開する福経促系のブース(上)と、購入したインテリジェンス臭豆腐。謀略の香りが匂った。 ©安田峰俊

 インテリジェンス臭豆腐はやや味が濃かったが美味であり、隣の在日山東同郷会のブースで売っていた中国の赤ワインChangyu Longyu Estate 2021年(グラス500円)によく合った。ほか、インテリジェンス唐揚げもなかなかいける。おっさんたちは本業の飲食業はちゃんとしているっぽいので、悪いことは言わないから対日工作活動よりも料理に専念してほしい。

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「他者の視点に立つ」情報発信は苦手…

 チャイナフェスティバル2024のもうひとつの醍醐味は、ヘンな表記の日本語ウォッチだ。たとえば下の写真は、山東省と湖南省の省政府が観光客誘致のために出展した公式エリア(5~6ブースが集まって特設コーナーが作られていた)で見つけた表記である。

上が山東省、中央と下が湖南省。日本語は難しい。 ©安田峰俊

 念のため書いておけば、私が怪しい表記を面白がるのは、「外国人のつたない日本語をバカにする」というチープな動機ゆえではない。省クラスの地方政府の公的ブースにすらこの手のヘンな表記が出現しているという現象が、中国の対外発信の性質を理解する上で大いに役に立つからだ。

 実は会場では、PRに日本の広告会社が関与していて日本人の広報担当社員もいるであろうEV自動車メーカーのBYD ジャパンなどの大企業1~2社を除いて、ほとんどのブースの日本語の表記がどこか怪しかった。大手航空会社である中国東方航空や海南航空のブースですら、ネイティブの日本人が読むと若干の違和感を覚える表記が見つかってしまう。

海南航空のブース。フォントやひらがなの大小がなんだか不安。 ©安田峰俊

 ちょっと雑な文化論を書けば、そもそも漢民族は、自分たちが圧倒的に数が多くて強大な存在であるためか、他の文化に対する理解が粗雑になりがちである(実は新疆やチベットの少数民族問題も、大いにこの性質に由来している)。他者の視点に立って相手が受け入れやすいアプローチをおこなうことも、彼らは極度に苦手である。