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 とはいえ、会場が盛り上がっていないかといえば──。決してそんなことはない。来場者の8割を占める中国人たちは、普通の若者やファミリー層も多かったからだ。大使館主導の祭典であるためか、今世紀に入って普及した民族服「漢服」を着て歩く男女も目立ち、あちこちで自撮りに興じていて華やかである。

 中央に作られたステージでは、中国人歌手が日本語のMCをおこなっても誰も反応しないのに、中国語に切り替えるといきなり歓声が上がる光景もしばしば見られた。

漢服姿の人、多数。ステージに登壇するわけではなく、「お出かけ着」として着ている人も多い。 ©安田峰俊

 中央の食事コーナーは家族連れで占められ、完全に中国国内のモールのフードコートみたいなカオスな光景だ(ただし、運営側がゴミの分別の徹底遵守を呼びかけており、そこは人々もちゃんと守っていた)。この2日前に行ったサッカーW杯予選の中国アウェイ席と同じく、国内の休日の繁華街をそのままワープさせたのではないかと思うほど、全体的に中国そのものだ。

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内向きイベントに跋扈する「同郷会」

──中国人の中国人による中国人のためのフェス、in代々木公園。

 会場を覆う異常に濃厚な中国成分は、観察者である私にはありがたかった。ただ、中国側がここまで徹底的に「内向き」の雰囲気を漂わせているのは、交流イベントとしては正直どうなんだと思わなくもない。

 公式HPを確認すると、事前に約12万人の来場者目標がアナウンスされていたのだが、いまどきカタギの日本人の多くは、わざわざ中国政府系の交流イベントには来ないだろう(「婚活マッチング後の初デートでタイフェスに誘う男性」はアリでも、チャイナフェスに誘う男性は愛が試されそうだ)。

 本国に報告する来場者ノルマの達成に追われた大使館が、留学生会や華僑団体に通達を送りまくって自国民を動員した結果が、この光景ではないか……? という、舞台裏の事情も想像してしまう。

黒竜江省のおばちゃんが麺をつかみどりで(ビニール手袋着用)作ってくれる佳木斯拌麺(ジャムス拌麺)。おいしい店のブースは一瞬で混雑するのだが、それも納得の味。 ©安田峰俊

「同郷会や総商会のブース出しが、去年以上に増えている気もします」

 前年のイベントに出店した日本人から、各ブースを眺めながらそんな話も聞いた。確かに、飲食系のブースはこの傾向が特に目立つ。個人や単独の商店での出店はほとんどなく、「〇〇同郷会」や「〇〇総商会」の横断幕だらけだ。大使館の呼びかけで出店したのだろう。