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“通電”は手や足、額や局部にも…

 山形さんは言う。

「本社の方で俺がなんか粗相をして、こっちに居れと、会社が借りていたO町のアパートにいたんです。そこで野間が遊びの延長で俺に伸びた電線の片方を握らせて、もう一方の端を俺の腕に当てた。そうしたら、腕の筋肉が硬直してピクピクってなるじゃないですか、それが面白かったみたいです。それで腕から、今度は足のふくらはぎに場所を変えたりするようになって……」

 山形さんが通電によって昏倒したことで、松永は楽しそうに「それ、いける」と笑い転げ、以来、ワールド社内では通電が虐待に加えられることになった。

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 従業員への懲罰で、松永から「デンキをしろ」との声が上がる。するとその他の社員が、当該社員の身体を押さえつけて器具の準備を始め、通電の虐待を加えていたのだ。

 しかも、何度も繰り返すなかで、できるだけ傷を残さず、命までは奪わないようにと、まるで研究のように人体のあらゆる場所へと通電を行う「改良」の作業が行われていた。

 かつて山形さんは私に語っていた。

「私は手や足だけでなく、額や局部にもデンキをやられました。延べで100回以上はやられました。手や足は電流が流された途端に硬直するような感じで、やがて電熱線のように熱せられたコードが皮膚に食い込み、焼けただれます。

 額はいきなりガーンと殴られたようなショックがあります。局部はもう言葉に表せません。蹴られたとき以上の衝撃と痛みでした。松永だけでなく、それをやる他の社員もニヤニヤと嬉しそうにやっていました……」

膝にくるぶしに腕に…今も残る“通電”の痕跡

 さすがに心臓の近辺は命にかかわる危険があるということで、通電することは避けていたそうだ。

 そこで私は山形さんに質問する。

「まだ傷は残っているんですか?」

「残ってますね」

「見せてもらうことは可能ですか?」

「あ、いいですよ」

 私は過去に何度か山形さんに、通電によってできた傷を見せてもらっているが、久しぶりのことだ。彼は93年1月以来、松永とは顔を合わせていないため、今回のものは約31年前までの虐待の痕跡ということになる。

今も残る虐待の傷跡

 最初に山形さんが見せてくれたのは、右足の膝の裏側。幅約1.5cmのタイヤ痕のようなケロイドがはっきりと残っている。

「ここに巻いた電気コードが熱を持った際にできた火傷ですね。もう一方はどこか体の別の部分に当てたんでしょう。同じようにあるのが……」