そうこうするうち車窓の雰囲気が変わり…
……そんなことを考えながら車窓を眺めていたら、だんだん事情が変わってきた。ずらりマンションのベッドタウンから、のどかな田園地帯へと。琵琶湖の湖上に鳥居が浮かぶ白鬚神社の脇をトンネルで抜けると、もうそこからはいよいよベッドタウンとは違う、また別の町にやってきたようだ。
山科駅で琵琶湖線(東海道本線)と分かれた湖西線は、まずは大津市内を通り抜け、琵琶湖北西では高島市に入る。
高島市は2005年に高島郡5町1村が合併して誕生した比較的新しい都市だ。5町1村の中に飛び出て大きな都市がなかったからか、市街地は旧町の中心地が横並びのようにいまもそのまま残っている。
比較的大きな市街地を抱えているのは安曇川駅(旧安曇川町)や近江今津駅(旧今津町)。市役所は旧新旭町の新旭駅のすぐ近くにある。
と、つまり高島市という町は、外から見てもわかりやすいような核があるわけではなく、同じ湖西線仲間の大津市とは違って京阪神のベッドタウンという要素も少なく、平たくいえばのどかな田園地帯というような、そういう琵琶湖畔の町なのである。
あなたはどうしてこの町に?
そんな町の一角は旧マキノ町、マキノ駅にほど近い市営アパートに暮らしている男性がいる。柳田清さんだ。60歳で仕事をリタイアし、高島市にやってきた。といっても、いまも“本来の住まい”は生まれ育った奈良県にある。
「40代のころからスノーボードにハマっていましてね、最初はあちこち大きなゲレンデに通っていたんですけど、50代になってからは体力も落ちてきて、高島市にはいいスキー場があるぞ、と。仕事をしているうちは毎冬の週末、リタイアしてからは平日も来られるから、4泊5日でこっちに来るようになったんです」(柳田さん)
スキーシーズンには週の半分を高島で過ごす。少しずつ知り合いも増えてくる。そして、知り合った仲間から「そんなにいつも通っているなら、物件を探してこっちに住んだらどうだ」と言われるようになった。
「奈良の自宅から100kmくらいなので、通えないこともない。でも大変ですからね。それで中古物件を探していたんですが、そのときにたまたま『おためし暮らし』というのを見つけたんです。
最初は1月から3月まで、今津の物件に住んでみた。それで存分にスノボを楽しんで、地元の人と仲良くさせてもらって、この地域のことをいろいろ教えてもらって。そうなると、冬だけじゃなくて他の季節はどうなんだろうと、気になってくるんです」(柳田さん)
そこで今年の7月から、「おためし暮らし」で10ヶ月間住むことができるマキノ駅近くの市営住宅で、高島の暮らしを満喫しているというわけだ。