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「ためしに」と「腰を据えて」の両立

「このサービスをはじめる以前ですと、おためしで移住候補先で生活するといってもせいぜい週末だけとか、かなり限定的でした。1ヶ月とか3ヶ月という単位で借りられる住宅がほとんどなかった。

 その点、弊社が加わることで、オーナーさんから空き家を提供してもらいやすいというメリットもあるのかな、と。利用者さんも、数ヶ月間暮らしてみれば、地域のこともだいぶわかってくると思いますし」(中西さん)

 つまり、いきなり移住するのではなく、その前に短期間でも実際に腰を据えて住んでみて、本当に移住すべきかどうかの検討材料にしてもらう、というサービスである。このサービスは自治体側にもメリットがあるという。高島市市民生活部の森田茂之次長は次のように話す。

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森田茂之さん(左)、中西智弘さん

「高島市も人口減少が顕著でして、空き家も増えていますし地域の担い手も減っています。ただ、京都や大阪へは60~90分ほどで行くことができますし、通勤圏内として移住の検討対象としてのポテンシャルはあると思うんです。実際、琵琶湖も山もあって、自然環境がすごく良いと言ってくださる方もいます。

 ただ、実際に移住するということになると、やはり田舎の方ですから、地域との関わりというところが問題になってくる。どうしても地域のルールとかいろいろありますから。だから、まずは本格的な移住の前に『おためし暮らし』で地域について少しでも知ることができる機会があるのは大きいと思います」(森田さん)

「おためし暮らし」では、自治体側は利用者が生活する住居(空き家)を確保し、さらに基本的な家具一式を揃えて提供している。家賃も自治体が補助しており、高島市の場合は普通に借りる家賃と比べて半額ほどになっているという。

 また、「おためし暮らし」は移住する人だけでなく、移住者を受け入れる地域の人たちにも、あらかじめ地域の事情を知っている人が来てくれるということでメリットは小さくない。

 

 コロナ禍以降、環境に恵まれたところで暮らしたいというニーズは高まっている。そうしたニーズと移住を促進したい自治体の思いをうまく結果に結びつける“入口”としての役割を、「おためし暮らし」が果たしているというわけだ。