ユニクロ、ヤマト運輸、アマゾン、佐川急便、米国大統領選のボランティア……いたるところに潜入取材を行い、「企業に最も嫌われるジャーナリスト」と呼ばれる横田増生氏。このたび20年におよぶ取材活動で得てきたノウハウのすべてを『潜入取材、全手法――調査記録、ファクトチェック、執筆に訴訟対策まで』(角川新書)にまとめた。

 日本ではとかく卑怯な手法と批判されることの多い潜入取材を、なぜするのか。それによって何を見てきたのか――都合の悪いことには口を閉ざし、楯突く者には口封じをしようとする企業と対峙してきた潜入取材の第一人者でジャーナリストの横田氏に話を聞いた。(全2回の2回目/最初から読む

横田増生氏

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潜入取材で大事にしている「ウソをつかないこと」

――『潜入取材、全手法』では、潜入ルポを書くうえで大事にしていることの2つ目として「ウソをつかないこと」をあげています。

横田 潜入目的でアルバイトの採用面接を受ける際に、素性を隠そうとして履歴書に偽名やウソの住所を書いたりすると、取材の成果を発表したとき、企業から私文書偽造だと言われかねないですからね。日本では潜入取材は卑怯なやり方だと批判する人も多い。だから面接時にかぎらず、ウソをついてはいけない。

 潜入取材するのは、企業にとって都合が悪いこと、隠したいことを報じるためです。アマゾンに潜入したことのあるイギリスの記者は「卑怯なのは情報公開しない企業のほうで、イギリスでは潜入取材を批判する人はいない」と言っていましたね。

高齢者が1日20キロも歩いていたアマゾン

――横田さんが潜入した企業ですと、ユニクロの店舗は若い人が中心だと聞きましたが、反対にアマゾンの小田原物流センターは年齢の幅が広かったようですね。

横田 2度目のアマゾン潜入取材(2017年)では、トイレの個室に「おむつを流さないように」と書かれた張り紙があるのを見つけたりしてね。実際、ここで働く高齢者は多いですよ。面接では1日10キロくらい歩くと聞かされましたが、実際に働いて歩数計で測ったら、1日20キロも歩いていた。それを70歳過ぎの人たちもやっている。

 僕の場合は、ふたつの仕事(時給の仕事と記者としての取材)を同時にやっているようなものですから、余計に疲れます。作業しながら原稿のネタを探さないといけないですし、休憩時間も僕にとっては仕事中だから、誰か話しかけやすそうな人はいないか探さないといけない。アマゾンだと働いているあいだ中、持たされた端末に何階のどこの棚に何を取りにいけと指示が出て時間に追われますから、特に疲れる。……アマゾンの倉庫に潜入取材するなら若いうちのほうがいいでしょうね。