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 さて、局面はというと、藤井が50手目に前例から離れて変化し、両者手さぐりで指し進めていく。永瀬はポイントを稼ぐべく、4筋の歩を交換した。持ち歩が生きるかどうかが今後の焦点だ。対して藤井が左桂を跳ね出し桂交換と先に動いた。永瀬が歩交換したからこそ生じた手段だ。12時10分、永瀬の手番で昼食休憩に入った。

解説の山崎八段からは感嘆の声があがった

 藤井の選んだ昼食が「都ホテルカレーライスセット(サラダ、スープ付)」と「ウーロン茶」、永瀬が「10種握り寿司盛り合わせ(吸い物付、わさび抜き)」と「アイスカフェラテ」。さらに休憩時におやつも食べて効率化しようと「巨峰とシャインマスカットのミルクレープ」も頼んでいる。

藤井王座の昼食(カレー))
永瀬九段の昼食(寿司)

 休憩明けの桂交換から激しくなる。永瀬が持ち歩を生かして9筋を端攻めすれば、藤井は4筋の歩を伸ばして反撃する。AIの評価値がまったくの互角なのを見た山崎は、「お互い予想が外れて、難しい局面が続いているのに、それでも形勢互角とは凄いですね」と感嘆の声をあげる。

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 14時から解説会が始まり、棋士はみな会場に移動した。一方、加藤桃子女流四段が「勉強に来ました」と控室を訪れ、稲葉と私の3人で継ぎ盤を囲む。

大盤解説の様子

 永瀬は一旦攻めを中止し、受けに回る。藤井は桂を金と交換し、馬を敵陣に作って迫る。馬の存在感が大きいのと対照的に、永瀬の飛車が働いておらず、控室の評判は藤井良し。稲葉が「これは休憩ですよね。すぐには手を返せない」と言った通り、永瀬が指さないまま午後5時となり30分の休憩に入った。

詰めろをかけ続けることができれば永瀬九段の勝ち

 休憩明け、馬を排除すべく永瀬は▲4七角の自陣角を打った。当初は、ここに角を打つようではと見ていたが、調べてみると耐久力がある。谷川が「(自陣角を)打っても未来があるんですね。粘っているだけに見えるけどそうではないんですね」と感心した口調で語る。山崎も「互いにこれだけ読みにない手を指されて、どっちもバランスを崩さない。これでまだ50-50ってすごすぎるなあ。レベルが高すぎる」。

 永瀬の自陣角は馬を追うことに成功。自玉を安全にして攻勢をかける。と金を寄って桂を奪い、銀取りを無視して金取りに桂を打ち、敵陣を崩していく。広々と空いた後手陣で藤井玉を守るのは銀1枚になった。藤井は持ち時間を使い切って1分将棋になり、再び馬をにじり寄って迫る。だが、永瀬はもう受けない。成り込んだばかりの成香を王手で捨て、さらに桂で王手、そしてあの自陣角が飛び出した!