藤井聡太王座に永瀬拓矢九段が挑戦する第72期王座戦五番勝負第3局が、9月30日、京都市「ウェスティン都ホテル京都」で行われた。

 第2局では、午前中に81手も進んだ。後手の永瀬が△8四桂と7六の銀取りに打ったのに対し、藤井がそれを放置して▲4六香と攻め合うという驚きの進行だった。

第2局のハイペースを踏まえ、10時過ぎには現地についたが…

 銀を取った手が王手で、玉を逃げるしかない。王手で銀をただで取らせる手を、午前中に指すとは。この手については、第2局のあとに藤井から話を聞くことができた。

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「76手目△9五歩から想定外の局面になりました。△8四桂には銀を逃げるべきだったかもしれませんが、端を絡めて攻められるので。88手目△5四銀は意外で、△5一玉と玉を引く手を想定していました。▲7四歩と突けて良くなったかと」

永瀬拓矢九段(左)と藤井聡太王座(右)

 私は第2局のハイペースを踏まえ、第3局当日は10時過ぎには現地についた。ところが、本局は同じ角換わり腰掛け銀でも、後手の藤井が右玉にしたためスローペースな将棋になっている。ああ、慌てる必要はなかったか。

 立会人の谷川浩司十七世名人にまずは挨拶。先日、私の知人が仕切っている茨城県のイベントに来ていただいたことのお礼をいうと、「いえいえ、これで47都道府県、すべてを訪れましたので」と笑顔で返答。62歳のはずなのだが若いなあ。

午前中は両者手さぐりで指し進めていく

 現地大盤解説会は前年と同じく、関西若手棋士ユニット「西遊棋」が主催だ。解説が服部慎一郎六段、徳田拳士四段、上野裕寿四段、石本さくら女流二段。そして棋士会副会長としてサポートする糸谷哲郎八段にゲスト解説が山崎隆之八段と、豪華なメンバーが集まった。大盤解説会の定員180人はすぐに埋まったそうだ。

左から順に糸谷哲郎八段、徳田拳士四段、山崎隆之八段

 常務理事として訪れていた井上慶太九段、新聞解説の稲葉陽八段とも話をする。谷川と井上は兄弟弟子、稲葉と上野は井上門下だ。稲葉は物腰柔らかく丁寧な言葉づかいで、こちらが逆に恐縮してしまう。井上は仕事があるということで、「後はまかせたで」と稲葉に信頼しきった目つきで合図を送って去っていった。上野の様子からも兄弟子をとても尊敬していることが伝わってくる。よい一門だなあ。