今年1月にFOD(フジテレビの動画配信サービス)で配信が始まったドラマ『ペンション・恋は桃色 season2』には、山口智子がゲスト出演している。山口の演じた“東京のヒカリちゃん”ことヒカリという女性は、リリー・フランキー演じるペンションオーナーのハトコで、毎年夏になるとそのペンションへやって来ては、オーナーの娘と楽しくすごしていた。だが、その娘にヒカリが、自分と一緒に東京で暮らそうと提案したことをきっかけに、オーナー親子と彼女の過去の因縁があきらかにされていく。
モデル出身、朝ドラで俳優デビュー
このオーナーの娘を演じるのが伊藤沙莉で、山口とは劇中、本当の親戚のように自然なやりとりを見せている。伊藤といえば、この9月までNHKの朝ドラ『虎に翼』でヒロインを演じたことが記憶に新しい。対して山口は、いまから36年前の1988年秋から翌春にかけて、折しも昭和から平成へと移るタイミングで、やはり朝ドラ『純ちゃんの応援歌』でヒロインを務めた。
もっとも、近年の朝ドラの主演者が、伊藤を含めそれなりにキャリアを積んだ演技力のある俳優から選ばれているのに対し、山口はもともとモデル出身で、朝ドラで俳優デビューしたという点で異なる。それだけに苦労もしたらしい。『純ちゃんの応援歌』の撮影中には、実力がともなっていないところを努力と謙虚さで乗り切ろうと必死で、ときには「女優としてやっていく自信がない」と口にすることもあった――。そう著書で明かしたのは、このときの共演が馴れ初めとなった現在の夫・唐沢寿明だ(『ふたり』幻冬舎、1996年)。
実家は栃木県の老舗旅館
きょう10月20日に60歳の誕生日を迎えた山口は、栃木県で老舗旅館を営む家に生まれ育った。もともとは小料理屋のような小規模な旅館だったのを、嫁いできた山口の祖母が夫の死後、女将として切り盛りしながら、結婚式場もある6階建てのビルにまで大きくしたという。
山口は幼い頃に両親が離婚し、父親に引き取られた。父は風来坊なタイプで商売向きでなかったため、祖母は孫の彼女に旅館を継がせるつもりでいた。おかげで山口は子供の頃から将来自分が何になりたいか考えないようにしてきたが、一方で、《決められたレールがあることがすごくイヤで、反発したい自分もいる。その狭間で揺れ動きました》ともいう(『週刊現代』1988年12月10日号)。