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結婚指輪は「いらないです」

『純ちゃんの応援歌』で出会った唐沢とは1995年、7年の交際を経て結婚した。会見は、山口が金屏風を背にするのはいやだと拒み、取材陣にごく簡素に報告するにとどまる。このとき彼女が結婚指輪をしていないので、記者から問われると、唐沢が「時間がなくて買ってません」と答える横で彼女は「いらないです」と繰り返した。照れ隠しとも思われたが、後日、唐沢が指輪を贈ると、彼女はしみじみとそれを眺めながら、《私には、もったいない。私、こういうものの価値がよくわからないのよ》と言ったという(前掲、『ふたり』)。

唐沢寿明と山口智子、1995年の結婚会見 ©AFLO

「主婦になりたい」という夢があった

 翌1996年にはドラマ『ロングバケーション』で木村拓哉演じる年下のピアニストと同居するモデルを演じ、社会現象を巻き起こす。同年には『ビリケン』『スワロウテイル』など出演映画もあいついで公開された。しかし、これを境に俳優業からしばらく遠ざかる。

 もっとも、本人に言わせると、《とくに大きな決断をしたというわけじゃないんです。/結婚した直後だったこともあり、小さい頃に漠然と抱いていた『主婦になりたい』という夢をちゃんと実行してみようかなと。主婦って衣食住に関わって生活をクリエイトする仕事でしょ。面白そうだなと思って。それで家のことを楽しんでたら、あっという間に4~5年経っちゃった(笑)》ということらしい(『FRaU』2016年3月号)。

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フジテレビ系『ロングバケーション』(1996年/FODより)

職人の技と精神に関心を寄せるように

 40代に入るあたりからは、職人たちの技に関心を寄せるようになる。決定的だったのは2005年、オランダの画家ゴッホの葛飾北斎からの影響に焦点を当てたドキュメンタリー番組(BS日テレ『山口智子 ゴッホへの旅 「私は、日本人の眼を持ちたい」』)に出演したことだった。このとき、ゴッホがなぜ北斎の木版画に憧れたのかと考えるうち、《木版画というのは一枚にいろんな技が集約されているでしょう。刷り師、彫り師、紙を提供する人、それをプロデュースして世の中に広める人、とにかくたくさんのプロフェッショナルが集まっている、そこに魅力を感じたのではないかと思った》という(『婦人公論』2007年5月7日号)。