「こんなことになるなら、駆除はもう警察の方でやってくれ」
2023年の全国的なクマの大量出没を踏まえ、環境省は市街地での危険野生動物の駆除の際に銃を使えるよう、鳥獣保護管理法を改正しようとしている。今回の判決はそうした流れに「全く逆行している」と同氏は困惑を隠せないでいる。
「本来、住民の命や安全を守るのはハンターの役目ではなく警察の役目。こんなことになるなら、駆除はもう警察の方でやってくれ」
堀江氏は、北海道猟友会会長として、ハンターの身分をきちんと保証しなくてはならないと考えている。三役で協議して理事会を開き、今後自治体から駆除の要請があった場合に猟友会としてどのように対応すべきか、方針について話し合う予定だ。
万が一の跳弾の可能性を危険と判断された場合、最も懸念されるのが、箱罠でヒグマを捕獲した際の止め刺し(とどめ)だ。現在、人里近くに出たヒグマの大部分は、金属でできた檻のような構造の箱罠で捕獲されている。罠に入ったヒグマにとどめを刺すのに使われるのが銃だ。檻の隙間に銃口を差し込み、至近距離から頭を撃つなどして、一瞬で命を絶つ。今回の判決からすれば、こうした銃による止め刺しも、「ヒグマを貫通した銃弾が金属の檻にあたって跳弾する可能性がある危険発砲」とみなされてしまうかもしれない。
地元住民たちからは強い不安の声が…
池上氏が敗訴した10月18日以降、砂川市に仕掛けられた駆除用の箱罠の扉は、全て閉じられている。足跡などヒグマの痕跡はあり、確実に民家のそばをヒグマが行き来している状況にもかかわらず、捕獲してもとどめを刺すことができないため、わざと檻に入れないようにしてあるのだ。
この状況に対し、地元住民たちからは強い不安の声が上がっている。
「家のすぐそばをヒグマが歩いているのを見ることがある。お隣の80代のおばあちゃんは、朝早くから農作業をしている。早朝はヒグマが動く時間帯だからやめた方がいいと言ったが、長年の習慣は変えられないようで、そのうち襲われてしまうのではないかと不安でたまらない」
「確実に駆除をしてきてくれたハンターの存在は地域にとって欠かせない。子どもが自転車のトレーニングをしているが、ヒグマが怖いので後ろから車でついて行っている。ハンターも警察も駆除をしてくれないのであれば、自分たちの身は自分で守るしかない。何かあったら車で体当たりしてでもヒグマを止めるしかないと、覚悟を決めている」