ネットフリックスなど他の動画配信サービスに比べ作品数は少なめだが、通好みの良作が多いApple TV+。その中に「これぞ掘り出し物」というべき異色のドラマがある。題名は『CALLS コール』。全編、電話や無線などの通話と抽象的なCG映像のみで構成されるSFスリラーだ。役者や風景などの実写は一切映らない。ストーリーは会話の音声のみで展開する。……と聞くと、ラジオやポッドキャスト、あるいは『かまいたちの夜』のようなサウンドノベル作品を思い浮かべるかもしれないが、本作はそうした従来の音声コンテンツとも一線を画す、体験没入型の新感覚ドラマだ。
物語はロサンゼルスとニューヨークで離ればなれに暮らすカップルの遠距離電話の会話から始まる。画面には一本の白い線のみが映し出され、左右両端に「ティム」「サラ」の人物名が示される。白い線は2人の声に合わせて音声波形のように揺れる。それは単なる音の大きさだけでなく、2人の感情や微妙な距離感も表わしている。まるで他人の会話を盗み聞きしているような感覚に襲われ、抽象的なビジュアルによって想像が掻き立てられる。会話中、突然、「ティム、外に誰かいる……」と怯え始めるサラ。電話を切り警察に通報するが、外にいたのはティムの顔をした男。だが、ティムは今、LAにいる。再び彼と電話で話す。確かにティムの声だ。ということは……ティムが二人いる!?
耳と目と脳を大いに刺激しながら1話ごとに不可思議な事態に巻き込まれた人々の人間模様が描かれてゆく。各エピソードは連関し、やがて人類に起こった未曾有の事態が明らかとなる壮大なスケールの物語だ。監督は新鋭フェデ・アルバレス。巨匠が名を連ねる『エイリアン』シリーズの最新作(『エイリアン:ロムルス』)に抜擢された注目株だ。
思わず「まだこんな手法があったのか!」と唸らされる、きわめて野心的な一作である。
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『CALLS コール』
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