つげ義春の短編『雨の中の慾情』を原作に、片山慎三監督が創出した同名映画で、主演を務めた成田凌さん。俳優デビュー10年で巡り合った数奇なラブストーリーで、売れない漫画家・義男をどう演じたのか。俳優としての想いも聞いた。

©山元茂樹/文藝春秋

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──『雨の中の慾情』への出演の決め手は何だったのですか?

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成田 片山慎三さんが監督で、撮影は台湾で、原作はつげ義春さんでと、僕にとってはもう全てが魅力的でした。片山監督と一緒に仕事をさせていただくことは念願だったので、迷いはなかったですね。

──片山監督も、「佇まいだけで物語れる役者」と成田さんを絶賛されています。実際にお会いする前に、片山監督についてどのようなイメージをおもちでしたか?

成田 これはあくまで僕の想像ですが、「逃げずにまっすぐ向き合う」方だというイメージをもっていました。世の中には目を背けたくなることや、逃げたくなるようなこともたくさんあります。でも、片山監督はそういうものから決して逃げない人、という印象がありました。

©山元茂樹/文藝春秋

──片山監督は、『岬の兄妹』(18年)にしても、ドラマ『ガンニバル』(22年)にしても、人間の裏側にスポットを当てた作品を数多く発表されています。

成田 片山作品には力がありますよね。これまでの作品を見ていて、生半可な気持ちでは挑むことができないだろうという印象を抱いていました。もちろん、真剣な気持ちで撮影に臨むのはどの作品の現場も同じですが、片山さんの作品は、俳優が身を投げ出さないと成立しないのではないかと思っていました。僕はそんな環境を欲していたのかもしれません。オファーをいただいたときは武者震いがしましたね。精神的にも肉体的にも大変なのは覚悟の上で、そこは頑張りたいなと思いました。

──実際に片山監督にお会いしてみて、いかがでしたか?

成田 純粋な方だなと思いました。こんな言い方はおかしいかもしれませんが、すごくかわいいんですよ。監督としての才能はもちろん、人としてもすごく魅力的な方だと思いました。