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「憔悴しきった感じでした。2連勝したときには、上がったという確信があったと思います。2番勝てば、必ず天が味方すると。競争相手が2人とも2連勝するとは予想しなかったでしょうから、結果を知った時のショックは大きかったはずです。もし自分が1敗でもしていたら、もっとサバサバしていたと思うんですけどね」

 西山はこの後に三段リーグを2期戦ったが、年齢制限まで1期を残して退会し、2021年4月1日、女流棋士への転向を公表した。

プロと技術的に遜色がなくてもプロになれず苦しんでいる人も

 木村は三段リーグで13期・6年半を費やした。四段昇段のためには、何が必要なのだろうか?

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「どうやったらリーグを抜けられるかというのは、今になってもわからない。結果的に一生懸命やり続けたことが実を結んだということです。ただ同じことをやっても四段になれない人もいたわけで、どこがラインかというのは、今になってもわからないところがある。私の弟子も今リーグにいますが、プロと技術的に遜色がない人たち、中にはそれ以上と自負できる人もいると思いますが、彼らがプロになれずに苦しんでいることには、複雑なところがありますね」

 三段リーグからプロデビューできるのは1期につき上位2人。次点2回による昇段、編入試験合格者が加わる場合もあるが、原則的に年間で4人しかいない。これは各棋戦の出場枠の関係で、現役棋士の数を一定に保たなければならない連盟の事情がある。

 

 西山が退会届を出した翌日、木村と行方は一献を交えた。急には来られないだろうと思ったが、西山にも声をかけてみるとその場に駆けつけた。誰も三段リーグの話題には触れなかったという。たわいもない話で酒が進んだ後、西山は「おせわになりました」と感謝を伝えた。約2年半に渡ったVSは、ここで終わりを迎える。

木村が西山に感じた変化

 女流棋士のレベルが大きく上がったと言われるのは、10年ほど前からである。女流五冠であった福間香奈(当時・里見姓)が、女性初の奨励会三段に昇段したのが2014年。翌年に西山も三段リーグ入りを果たした。まだ女流棋士の資格は得ていなかったが、リーグ在籍中に女性奨励会員として参加できる女王と女流王座、女流王将の三冠を達成する。2人は棋士公式戦にも参加し、勝利の実績を積み上げていく。

 西山が今回の編入試験資格を得るまでの勝利数には、木村と対戦したNHK杯戦での一局も含まれている。木村は西山に変化を感じたという。