おつまみは「料理」にあらず「娯楽」なり。本書のコンセプトは明快だ。でも「娯楽」だからこそ求められる真剣さはある。「考えること」が好きで、度重なる試作・研究の末に、食材や調理の原理原則を独自に導き出して概念化し続けてきた料理研究家の著者はそう訴える。本書ではつまみに必須の要素として、塩気・香り・刺激・食感・温度・うま味の6つの「軸」を立て、これらの要素を持つ各種レシピを紹介している。
「かまぼこは焼くとき、生で食べるとき、それぞれ何センチに切るとおいしいのか」「冷めても衣がガリガリのから揚げを作るための粉の配合は?」といったように、いくつものパターンを比較検討するページも。タイトル通り、まさに研究スタイルの実践的な本だ。
「おつまみ本の需要は、やはりこれまであまり料理をしてこなかった人、特に年配の男性にあり、そうした方は理屈に心を動かされる傾向があるのではないかと考えました。温度やタンパク質の変化で食材にどのような変化が起こるのかを解説したことで、説得力が生まれたと思っています」(担当編集者の谷綾子さん)
30~40代のレシピ本の主要読者層にも、もちろん届いている。人気マンガ家・スケラッコの軽やかな絵も印象的で、「小さな子供が手に取った」という声も。読んで楽しく、使って便利なヒット作だ。