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 子どもの学力を伸ばしたい。頑張っている教員をきちんと評価して欲しい。そんな思いは誰にでもあるだろうし、教育関係者ならばなおさらだろう。

 だからといって、教育をビジネスのように考え、教員を競争させれば、そしてインセンティブを与えればテストの結果が上がる、というのはあまりにも安易で、間違った答えだ。

 学校におけるメリットペイ制度の根底には、検証されるべきいくつもの想定がある。

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(1)生徒の学力低迷の原因は、教員のやる気やインセンティブの欠如にある

(2)つまりは、教員は生徒の点数を伸ばすノウハウをすでに持っているが、やる気がないからそれをフルに活用していない。

(3)教員にやる気を与えるのは、生徒の成長であったり仕事に対するやりがいであったりする「内的報酬」ではなく、ボーナスなどの「外的報酬」である。

 もちろん、これらの想定はどれも間違っている。

 アメリカの教育現場にメリットペイ制度が導入され始めたのは1980年代であり、今から半世紀近くも前のことだ。その後、弊害が次々に露呈し、新自由主義教育「改革」の中では化石のように古びた印象さえある。

 だから大阪市の多くの教育関係者たちは、そのような制度を市はなぜ今になって導入しようとしたのか、と首をかしげていた。

 教育関係者が疑問に思うのも無理はない。そこには教育学の知見に基づいた深い理由などないのだから。

 端的に言えば、教育の素人である新自由主義者の政治家らが、専門外である教育への介入を強め、公教育も市場化と民営化によって「改革」できるという単純で間違った答えにたどり着いただけのことだ。

加速する「公教育の市場化」

 新自由主義社会では、政府は電気、保険、鉄道、郵政など、公共として行っていた事業を民営化し、「市場」に委ねる。政府はその市場を管理し、まだ民営化されていない領域には新たな市場をつくり出す役割を担う。

 だから水道に続き、公教育という新たな市場を開拓しようとしたのも、新自由主義の教科書通りのシナリオなのだ。

 2018年、当時の吉村大阪市長が学校における メリットペイ制度の導入を提案した時に、公教育の完全なる市場化と民営化を実現するのに不足していたものは何であったか。それは、全ての学校、校長、そして教員が、自らの生存をかけて、子どもの成績の結果を競い合う体制だった。