故人のご遺体を火葬し、その人生を締めくくる場所「火葬場」。今でこそクリーンな運営をしている場所が多いが、かつては火葬場でさまざまな事件が起きていた。いったい、どんな事件が起きていたのか――。
ここでは、元火葬場職員・下駄華緒氏が、火葬場で起きた事件を徹底調査してまとめた書籍『火葬場事件簿 一級火葬技士が語る忘れ去られた黒歴史』(竹書房)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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老夫婦が自ら炉に入り点火悲哀の火葬場心中事件
平成17年(2005)11月7日午後2時頃、福井県大野市の火葬場の近くに、不審な車が停まっているのを付近の住民が発見した。
田んぼに囲まれるように立つこの火葬場は、じつは年ほど前に閉鎖された、いわば廃火葬場。平屋建てのブロック造りで、施設の老朽化が進み扉も完全に閉まらないような状態だ。
なので、用事があって訪れる人などまずいなく、車が停まるのも異例なこと。しかも、この車はエンジンがかかっている状態だった。さらに極めつけは、車のなかでどうやらクラシック音楽が大音量で流しっぱなしになっていることだ。どう考えても普通の状況ではない。不審に思った住民は、警察に通報した。
現場にかけつけた警察官が火葬場のなかを調べていくうち、ひとつだけおかしなポイントが見つかった。使われていない施設であるにもかかわらず、火葬炉だけが暖かい状態になっていたのだ。
引き出して見てみると、真っ黒に焼け焦げた炭のなかから遺体を2体発見した。
計画的な焼身心中
停めてあった車の所有者は、同市に住む80歳の男性であった。どうやら火葬炉のなかで見つかったふたりは、この男性とその82歳の奥さんらしい。彼らには子どもはいなかった。
車内を調べると、給油伝票の裏面に書き置きが遺されていた。発見された前日の夕方からの行動を簡単に記したものだが、内容を読み進めていくうち、とんでもない事実が判明した。
なんとふたりは、自ら火葬炉のなかに入って点火したようなのだ。いうならば、焼身心中である。