CMの仕事と演劇の両立ができず、演劇を選んだ
―― CMのお仕事をされている中で、演劇をまた再開されるんですね。
塚本 先輩方って一人一芸みたいに面白いユニークなコマーシャルを作ることに長けていたんですが、僕はどれもそれなりなんですけど、ちょっともう一つというような。まあ、新人だったので、今思うと何を言ってるんだという感じなんですけど。なんか自分は器用貧乏なほうに行っちゃってるな、どう伸びていくかも自分もよく分からないような期間があって。それでお芝居をしてみたい気持ちになって、社長が理解ある方だったので恐る恐る「お芝居やっていいですか?」と聞いたら、「いいよ」とえらいスピードで答えてくれて。でもお芝居をやっている期間に社長はロサンゼルスのコマーシャルの撮影を当ててくるんですね。「両方やれば?」みたいな感じで。それは不可能で、共倒れしてしまったんですね。両方ともやったということですけど、不満足な結果になってしまったので、結局、演劇のほうを選んじゃったんですね。
―― 再開した時はどういうメンバーだったんですか?
塚本 大学の時にやっていたメンバーが、本当に演劇をやりたくてやってらっしゃる人たちを集めてきてくれて、その人たちとやったんです。
―― 田口トモロヲさんもその中にいたんですか?
塚本 トモロヲさんはある演劇を観に行った時に、ものすごいユニークなお芝居をする人がいるなと思って。口が本当にここまで(耳まで)裂けちゃうんです。その方に自分らの演劇にも出てもらいたいとお呼びしたのが最初ですね。会社を辞めた後にやった『電柱小僧の冒険』の芝居で出てもらいました。
『電柱小僧』がつくられたのはお芝居の美術を生かすため
―― 『電柱小僧』も最初は演劇だったんですね。
塚本 はい。これは結構自分としてはいい出来になったという感触があって。演劇は一回よくても駄目なものですからコンスタントにずっとやる持続性が大事。その後映画に移って、二度と戻らなかったんですけど。
―― 『電柱小僧』の8ミリ版に出てくる美術の作り物は、お芝居の時に既に作られているんですね?
塚本 そうなんですよ。もっと言うと、『電柱小僧』のお芝居で作った美術を捨てるのがもったいない、映画に活用したいと思ったんです。演劇なんだから演技にもっと凝らなきゃと思うんですけど、美術ばっかり作っていたんです。みんなたぶん「演技の稽古をしたいよ」と思っていたと思うんですけど。
―― 塚本さんが主導して劇団員がみんなで一緒に作る感じですか?
塚本 そうですね。その時の芝居は、のちの僕の映画と同じなんですけれども、スタッフだけをやる人がいない。みんなキャストとスタッフを兼ねているので、自分が出てない時に交代交代で音響をやったり照明をやったり。非常に面白くよくできたし、美術も捨てるのがもったいないので、昔やった8ミリ映画をやりたいなと。
―― じゃあ、キャストも同じですか?
塚本 ちょっと変わってますけど、だいたい同じメンバーでした。
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