「SNS等の投稿には十分配慮してほしい、被写体である子どもたちを一緒に守ってほしい、と書かれていました。ああ、こんなやり方があったんだ、と驚きました。そして、この方法なら彼らを撮れるかもしれない!と。僕の中で、点が線につながった瞬間でした」
その映画の監督こそ、旧知の仲の竹林亮さんだった。
「僕は以前、被写体として竹林監督のカメラの前に立ったことがあり、その経験から、映像を美しくシネマティックに仕上げる技術もさることながら、彼が人柄で作品づくりをする人だと知っていた。だから、この映画には適任、というか彼しかあり得ないと思って託すことにしたんです」
目標を作らない撮影
作中には、7歳から19歳まで主に8人の子どもたちが年齢順に登場する。朝晩のルーティーン、将来の夢、親との関係、誕生日、キャンプ、お祭り。なんでもない日常の中に小さないざこざがあり、笑いがあり、涙があり。彼らは実にさまざまな表情を見せてくれる。1年半にわたる密着を、竹林さんはこう振り返る。
「気をつけていたのは目標を作らないことです。計画も立てない。『一緒に行ってもいい?』と聞いて断られたら、絶対に追わない。見せてくれるところだけ撮って、あとはいるだけ。普通なら怒られそうなゆったりしたペースで撮影していましたね(笑)」
そのやわらかなスタンスが功を奏したのか、やがて子どもたちの方から、「今日、髪を切りにいくけど、来ないの?」と誘ってくれたり、大事な話を聞かせてくれるようになっていった。その姿は、彼らが共同制作者になったようでもあり、カメラの力を借りて前進していくようでもあり。