子どもたちへの思い
「あくまで被写体優先なんです。これが本来のドキュメンタリーなんだと、そんなふうに感じてもらえると思います」と、齊藤さんは笑顔を見せる。一方、竹林さんは。
「ずっとプレッシャーです。公開前も、たぶん、眠れないと思います……。子どもたちが、この作品に出たことを良かったと思ってくれるか、傷付くことがないか。撮影中も編集中も今も、ずっと考えています。そして、願っています。この映画は、なんと言っても彼らのためのもの。いつか施設を出たあと、どんなに辛いことがあっても、自分たちには、こんな時間があったという心の拠り所にしてもらえたら……。それが、この映画のいちばんの目的なんです」
児童養護施設では、18歳になったら自立の準備が整い次第、ここを――皆と暮らしてきた家を出ていかなくてはならない。彼らの自立は簡単ではない。だから応援したいのだ、と齊藤さんも言う。「この映画は、僕たちから彼らに贈る“お守り”なんです」と。
なお、よりデリケートな背景を持つ子どもたちを守るため、『14歳の栞』のルールは、本作でも踏襲されている。ぜひ劇場でご覧いただきたい。
たけばやしりょう/CM、YouTubeコンテンツ、リモート演劇など多ジャンルで活動中。映画では『14歳の栞』(21)のほか、『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(22)が第32回日本映画批評家大賞の新人監督賞、編集賞を受賞。
さいとうたくみ/2001年、「斎藤工」として俳優デビュー。「齊藤工」としては、初長編監督作『blank13』(17)で国内外の映画祭で8冠獲得。また移動映画館の主宰や俳優主導でのミニシアター支援、撮影現場での託児所プロジェクト、白黒写真家など活動は多岐にわたる。
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映画『大きな家』
12月6日(金)より東京・ホワイトシネクイント、大阪・TOHOシネマズ 梅田、名古屋・センチュリーシネマにて先行公開
12月20日(金)より全国順次公開
https://bighome-cinema.com/