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私が秀子さんと穏やかに会話をしているのを見て安心したのか、午後の散歩の時間になると、袴田さんは布団から出て、外出の準備をはじめた。袴田さんはこの散歩を町の安全を守るパトロールと言っているとのことだった。

私は散歩に同行した。話しかけても返事は返ってこなかったが、肩を抱いても拒否されなかった。改めて、袴田さんの無罪確定の日がなるべく早くやってくるようにと、心の底から祈った。(第3回に続く)

坂本 敏夫(さかもと・としお)
元刑務官・ノンフィクション作家
NPO法人(受刑者の更生支援、こどのも健全育成等)理事長。1947年12月、熊本刑務所官舎で出生。高校卒業まで刑務所官舎で暮らす。母方の祖父、父に続き三代続いた刑務官。67年大阪刑務所刑務官(看守)に採用。神戸刑務所、大阪刑務所勤務を経て、法務省法務大臣官房会計課、東京矯正管区で予算及び刑務所・少年院等矯正施設の施設整備を担当。87年現場に復帰し、94年広島拘置所総務部長を最後に退官。以後、作家、ジャーナリスト、タレントとして活動。著書に『死刑のすべて』(文藝春秋)、『死刑と無期懲役』(ちくま新書)、『囚人服のメロスたち』(集英社)、『典獄と934人のメロス』(講談社)など多数。映画・TVドラマの監修(一部出演あり)も多い。